いない…。
獲物がいない…。
私の所属させてもらっている大物猟のグループの競り方は、しっかりと見切りをして大きな山から張り出した小山のような狭い範囲を攻める事が多いです。
この方法だと少ない人数でもきっちりと包囲網を張り巡らせることが出来るし、競る時間も短時間で済みます。
しかし最近は足跡や餌を食べた痕跡があっても小山の寝屋で寝ず、見上げるような大きな山まで引き返しているようです。
「足跡もドカドカある。餌を食べた痕跡も昨夜に違いない。普通なら獲物が出なきゃおかしいんだけど、足跡が全部大山に向かっている…」
何度か空山を巻いてしまって、実際に山の中を見てきた勢子役の方々から連絡を受けます。
小さな場所にいる獲物は獲り尽くしちゃったかな。
残りのイノシシや鹿は全部大山まで引いているようです。
「今までやったことないけど、いっちょ大山を攻めてみるか」
親方と勢子役が話し合って地形や獣道の走る方向、過去の獲物の逃走経路などから予測して待ち(狙撃手)の待機場所を大まかに決め、後は待ちに付くハンターが現地で獣道に残された足跡を確認して配置に付きます。
私の待ち場はこんな感じ。

山を繋ぐ稜線に沿った獣道で、拓けた場所を好んで逃走する鹿が出そうな気配が濃厚です。
読み通りにいけば稜線に沿って鹿が走ってくるはず。
待ち場の左手はこんな感じ。

大きな山を競るので一人でかなり広範囲を受け持ち、状況に合わせて動き回る必要があります。
3人の勢子がそれぞれ犬を放つと、すぐに獲物が出たとの連絡。
最初の銃声が聞こえたかと思うと私の待ち場にも鹿が出現!
しかし予想したルートとは異なり、木々の間を横切って飛び出します。
メス、メス、メス、オス。
ドカドカドカッ!と3連射。
さらに薬室に弾を込め4発目を発射。

しかし予想した方向と違う場所からの出現と、多数の鹿が現れて一瞬どの鹿に狙いをつけるか迷いが生じたために失中。
半矢になっていないかと少し足跡を追跡してみますが、一筋の血も落ちていません。
「あああ、久しぶりにたくさんの獲物が出たから失敗した。滅多にないチャンスだったのに自分のミスだ…」
山のあちらこちらから銃声が鳴り響き、鹿を倒したとの報告が来ます。
更に先ほどのルートの下側の藪の中をチラチラとメス鹿が逃げて行くのが見えますが、矢先の安全が確認できなかったので撃てず。
それから30分ほどして再び獲物の近付いてくる気配。
今度は稜線の左側を若いオス鹿ばかりの群れが、かなり警戒しながらゆっくりと近づいてきます。
数は4頭。

「来た!しかしかなり遠い。もっと近付くまで引き付けないと…」
身じろぎもせずに視線だけで鹿の動きを見つめますが、近付くより先に包囲網を突破されそうになったので先頭の鹿に狙いを定めて引き金を引きます。
先頭の鹿に狙いを定めたのは理由があって、上手くいけば先頭の鹿に中って残りの鹿は再び包囲網の中に戻る可能性があるからです。
ドカンッ!足を引き摺る鹿。
「半矢だけど確かに命中した。次!!」
銃声に驚いて後続の鹿はバラバラに逃走しますが、読みは外れて全ての鹿は包囲網の外側に向かいます。
とりあえず一番近くを走った鹿に向かって発砲! しかしこれは外れ。
しかも先ほど半矢にして足止めをしたはずの鹿にも回復して逃げられてしまいました(涙)。
「あああああぁ、また外しちまったよ…。しかも半矢にした鹿にも逃げられちまったい」
この稜線は私一人で受け持っていて獲物の出現に合わせて場所を移動する手筈だったのですが、待ち受けるには広すぎると判断。
山裾にいる親父に連絡し、こちらに応援に来てくれるように連絡します。
しかしその後は獲物は現れずに1時間ほどで猟は終了。
まだまだ獲物が包囲網の中にいたのは確実だったのですが、これ以上獲ると捌くのが大変との理由で切り上げたのです。
競り終わると
「そっちは何頭倒した?」
「3頭止めたよ」
「こっちは1頭」
なんていう報告が続きます。
当然私にも倒した数の質問が来ます。
「いや、すみません。1頭も倒すことが出来ずに9頭の鹿に逃げられました」
「お!よくやった。これ以上倒していたら回収も捌くのも大変だったからよくぞ外してくれた♪」
う~ん、外して褒められたのは初めての事です(笑)。
ベテランハンターの経験と読みは凄いもので、初めて競る場所で倒した鹿は8頭。

場所によっては15頭ほどの鹿に抜けられた場所もあったようで、少なく見積もっても40~50頭の鹿が出たようです。
皆で苦労して引き出し、麓まで作業道(公道ではない)を軽トラで運びますが、本当に過積載ですね。

こんなにサスペンションの板バネが伸びきった軽トラは初めて見ました(笑)。

それから捌いて夕方の4時。
なんとか残業(解体が17時を超える事)にならずに済みましたが疲れました。
あぁ、1頭でも倒していたら疲れも吹っ飛んだんだけどなぁ。
ヘナチョコハンター、またまた涙で枕を濡らす夜を過ごしたことだよ…。
しくしく。
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そんなにいっぱい出るんですね。
それにしてもそちらは山でも雪がないんだ~
かたまっている場所をかき混ぜたので、これで獲物の動きも変わるとのことでした。
1頭も倒せなかったけれど、たくさん鹿を見ることが出来て良かったです。
次は倒せるように頑張りたいと思います♪
私も次に買い替える時は軽トラにします(笑)
私は学生時代にモトクロスをしていたので軽トラに乗っていましたが、面白かったですよ♪
しかしウチのグループは毛抜き処理だし、解体が上手い人が多いので早いですよ~♪