休日の朝から携帯電話に着信。
相手は市役所の農林土木課となっています。
「もしもし…」
「朝からすみません、今日はお時間ありますか? 実は罠にアナグマかタヌキかアライグマかハクビシンみたいな正体不明の動物がかかっていると連絡がありまして、処理をお願いできないでしょうか…。
その罠なんですが、実は許可を持っていない方が家庭菜園にかけた闇罠なんです…。自分では処分できないから何とかしてくれと市に依頼があったのです」
闇罠と聞いて気が重くなりますが、農林土木課の方には有害鳥獣捕獲などで日頃からお世話になっているし、人助けのつもりで引き受けます。
ただし「闇罠を仕掛けた人には違法行為であることをきちんと伝えてください」とお願いします。
連絡を受けた時は久しぶりの休日でゆっくり寝ていたし、慌てて飛び起き準備。
パソコンで依頼主の住所を確認して出発!
でも気が重いなぁ…。
有害鳥獣捕獲でも自分の仕掛けた罠だと少しは「野生動物との知恵比べ」という駆け引きがあるのですが、人がかけた罠の動物を殺処分するだけだと殺すためだけの行動ですし、一般の方にも「ハンターって動物を殺すことを引き受けてくれる(都合の良い)人間」という誤った認識を植え付けることになるからです。
それに殺処分だけを行った場合、心の底に滓のように重たい何かが溜まっていくのが分かり酷く疲れるのです。
車を走らせながら考えます。
「アナグマやタヌキの猟期は11月15日から始まるから、捕獲許可の出ていないタヌキだったら放獣処置。ハクビシンはこのあたりでは生息していないから可能性は低いな。アナグマかアライグマだったら捕獲許可が出ているからお持ち帰りで解体作業だな。アライグマだと未知の味だから嬉しいんだけど、解体作業でせっかくの休みが無くなってしまうな…」
30分以上車を走らせ現場近くまで来て、詳細な場所が分からずに道に迷って彷徨っていると再び市役所から電話。
「まだ来ないのか?と催促の電話がありまして…」
現場間近まで来ていることを告げ、依頼主のお宅に到着すると挨拶もそこそこに
「何やっとったんじゃ~!? 1時間以上も待っとるんぞ。 ワシも忙しいんやっ!!」とお叱りのお言葉。
まずはお詫びをし、私の身分証明書と有害鳥獣捕獲従事者証をお見せします。
その上で私の住んでいる場所とこの場所まで来るのにかかる時間を告げ、猟友会の有害鳥獣捕獲隊員といっても仕事を持った一般人であり、市役所から依頼があって伺った今回の件も完全に無償のボランティアであるということをお伝えします。
(一日当たり千円~二千円の捕獲活動費が出るのは週一回の決められた合同捕獲日に出席した場合のみ)
そして依頼者から案内されて現場に到着すると…、
(内緒だけど、実は正体不明の動物と言われてちょっとワクワクしていたんですよね。笑)
なぁ~んだ、どっからどう見ても普通のタヌキじゃん!
罠をかけた人がタヌキだと分からなかったのは、何とか逃げ出せないかとタヌキが脱走を試みて怪我を負い、鼻筋が腫れ上がって面相が変わっていたからでしょう。

痛そうだね…。
「こいつが毎晩畑を荒らしよるんじゃ。殺してくれ!」
タヌキは捕獲許可が出ていない旨を伝えた上で、市役所の担当者に電話をします。
「タヌキでした。依頼者は殺処分を希望していますが、事後許可とか出ますか?」
「タヌキの被害報告はありませんので無理です」
「じゃあ放獣処置ということでいいですね?」
「お任せします。ありがとうございました」
罠ごと車に載せ、かなり離れた山奥まで行って檻を開け放します。

もう人間の畑を荒らしたりしちゃダメだよ。
林に入る途中でチラリとこちらを見るタヌキくん。

(残念ながらその瞬間の写真が撮れなかった)
罠を返却しに戻ると
「今度から罠にかかったらあんたに直接電話すればいいんかのぅ?」
と尋ねられたので、一定規模以上(ちゃんと基準がある)の農家の方が自衛で箱罠を仕掛けることは認められているけれど、一般の方が許可を取らずに仕掛ける闇罠は違法であることを説明します。
その上で野生鳥獣による被害があったら市役所に捕獲を依頼し、許可が下りたら猟友会の有害鳥獣捕獲隊員が来ることをお伝えします。
ふぅ、なんとか任務終了。
必要以上の説明や人的対応で結構大変だったけれど、今回は必要以上の野生鳥獣を殺さずに済んだのでそれだけで良かった。
捕まえたり殺したり放したり、人間って本当に身勝手な生き物だよなぁ。
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こっちは読んでいるだけで怒りが・・・
今回は休日奉仕お疲れ様でした。
それにしても本当に勝手なおっさんですね
何だか腹立たしくなりましたが
じゃんさんの紳士な対応、頭が下がります。
まぁ、済んだことなので…。
これくらいのことで怒っていたら話になりません。
実はもっとすごいのがたくさんいます(笑)。
大人やな~♪
いえいえ、私なんか諸先輩方に比べると全然大したことありません。
それに市役所の方なんて、年中こんなことを言われているかと思うと頭が下がりますよ。
仮に、同一人物から次回があれば、市役所の人と警察の人と一緒に行って、
「違法行為なので、事情聴取します」と、きっちりやってくれないものなのでしょうか?
こういった闇罠で困ることは、ハンター保険に入っていないからペットが誤捕獲されて怪我したり、万が一人怪我をしたりした場合に保険が下りないということなんですよ。
今回の記事読んでとても怒りを感じました。
身勝手すぎますね!
殺す覚悟もなしに罠を仕掛けるなんて。許せません!
大人の対応で尊敬いたします。
自分がこの状況に置かれたら喧嘩してしまうかもしれません、、、狩猟免許取得はもう少し精神的に大人になってからにします。
田舎じゃ、もっと大規模な罠が掛けられてたりする場合もあったりして(・_・;)
でも、みんなから期待される事は悪い事じゃないね~
しかし、その気持ち、その大変さ、よくわかります~~~~
じゃんさんが光り輝いて見える~!
さすが紳士じゃんさん、有害駆除やってないお気楽自給猟師のおいらにはとうてい真似できません。
何はともあれたぬ公、放免でよかったな!
畑を荒らされた方、お役所、猟友会
それぞれ難しい問題?課題?ですね。
依頼者の肩を一方的に持つつもりはありませんけど
収穫期になるとアレもコレも片っ端から盗られてたんでしょうね。。
お役所に被害状況だけ報告しても、根本的には対処してもらえないでしょうし
個人の方で簡単で有効な可能な対策なんて…
鳥獣保護法、動管法 等を遵守しつつも被害だけ無くすなんて
おそらくは不可能かと ^^;
『猟期』の『住宅敷地内』の『特定の』畑であるなら、
罠だけなら法に抵触しない『場合も』ありそうですから
闇罠を無くすのも不可能でしょうし、役所としても
荒らしている動物が特定できないと、猟友会に依頼すらできないのでしょうか?
(最初から狸と分かっていたら、どこも動けない?)
住宅敷地外の果樹は特に酷いのですけど、
そろそろ熟してきたな という頃合いに
猿なら集団で見事に綺麗さっぱり盗っていく。。
生活の係っている農業者であれば、役所としても動くでしょうが
趣味の個人であれば、緊急でなければ対処も後回し?
個人では勝手に殺すことも法で制限が掛かるでしょうから
取り敢えず『下手人』を取り押さえて緊急の判断を仰ぐ
荒らされ続けた方なりの、最後の手段なんでしょうか…^^;
(運良く怪我をする事なく殺せたとしても、
個人では棄てる事も 焼く事も 埋める事も 問題が…)
人手も足りないボランティアの猟友会と頭では分かっていても
やるせない怒りの矛先が向いてしまう事だって…
お役所だって真面目な方だと、両者の間に挟まって
鬱病に陥って、時には命も落としかねない…
それぞれの話を伺ったりすると、何ともやるせなくなりますよね。。
良い解決策は無くても、時には考えないといけない事だとも思います。
肉体的にも精神的にも、本当にお疲れ様でした。
あはは、正直なところは人間ですから…。
でもこれくらいのことで怒っていたら有害鳥獣駆除なんてできないかも(笑)。
私も修業が必要です。。。
地域ぐるみでされたらどうしようもないかもしれませんね~。
私もあまり無理せずに頑張りたいと思います(笑)。
タヌポンは解き放つ前に
「いいか、放してあげるからちゃんと恩返しに来るんだぞ!」
と、よ~く言い聞かせましたとも(爆)!
でも良かった♪
はい、そうなんですよね。
実際問題として家庭菜園でも荒らされる側としては腹立たしい気持ちもごもっとも、と理解できます。
だからボランティアでも行動するのですが、色々と問題もありますね。
人間社会に戦争が絶えないのと同じで、野生鳥獣がいる以上は「保護」と「駆除」はついて回る問題なのでしょうか。
かと言って私に良い解決方法が浮かぶ訳でもなく、色々なことを考えてしまう日々です(笑)。
自分の手は汚さずに、他人なら構わない。
自分にボランティア精神がないので、
狩猟者の善意の行動も、
「役所から税金を貰って行動しているから」と勘違いし、
何を言っても構わない。
有害鳥獣捕獲をしていると結構こんな目にあいますね。
うちの会長は、一切許しません。
その代り、隊員の言動にも厳しいお方です。
鉄砲撃ちは、紳士たれ!とよく怒られます。
また、「生き物の命を奪う」ということは、とても複雑な問題を抱えていることを体験できた有難い貴重な機会でもありました。
「鉄砲撃ち(ハンター)は、紳士たれ!」という言葉は本当に賛同できます。
あ~・・・コレ、コレなんですよね~きっと。
コレがきっと僕の気の迷いの原因なんですわ~。
孤高の狩人目指しているわけじゃないけど、この辺を超越できる気構えが出来たら猟銃も考えてみたいな~・・・とか思ってます。
そうなんですよ。
狩猟をやっていたらイヤな出来事に遭うことも実際に多いです。
悪いことはあまり書かないようにしているのですが、ある程度現実を知ってもらうのもよいかなと思いまして・・・。
これに懲りずにまたコメントよろしくお願いします♪