「命をいただく」ワークショップに参加してきました。
生きた動物を殺して料理して食べ、普段買っているお肉がどういうプロセスを経て食卓に上っているかを体験しようという会です。
主催者は地元猟友会の若手罠猟師の友人です。
「食育」という言葉が定着し、全国各地で似たようなイベントが開催されていますが、このワークショップはなかなかすごいですよ!
なんたって食材にハンター(もちろん私じゃありません)が捕獲した
生きた野生のイノシシを使うのですから(笑)。
参加者は10数名。女性の参加者も2名。参加費用は2,000円。
何らかの形で料理の仕事に携わっている方が多かったですが、雑誌の編集者や市役所の有害鳥獣対策担当の職員の方も来られていました。
皆さんで挨拶を済ませ、イノシシが捕獲されている罠の場所まで赴きます。

2日前に罠にかかったイノシシ2頭。

25kgくらいかな。
用意した木材で動きを塞ぎ、心臓を刺します。

血を流し、命が消える瞬間。

残酷で非情な光景です。
しかしこの事を経験として知っているのと知らないのでは、肉を食べるということにおいて大きな差があると思うのです。
スーパーにパック詰めにされて並んでいるお肉はもともとは命があったもので、我々が口にしている食べ物はその命をいただいているのです。
その事を知っていたら食べ物を粗末に出来ません。
私はとある加工食品メーカーの開発に携わる職場で働いていますが、食品関係の仕事をしていてもその事を知らない人があまりにも多く、哀しくなることが多々あります。
そして「生き物を殺す」ということで非難されることも多いハンターという人種ですが、誰よりも命の重さの意味を知り、奪った命に敬意を払っているのも事実です。
小雨が降る状況の中、泥に塗れたイノシシを運びます。

川に漬け、泥を洗い流します。

今回はイノシシが2頭いるので、捌き方は皮を剥く方法と毛を抜く方法の2通りのやり方で解体してみました。
皮を剥ぐ解体法の一頭、まずは皮を剥ぐ前にダニ対策で毛焼き。

講師のハンターに教えてもらいながら、おっかなびっくりで参加者がナイフを入れていきます。

次に毛を抜く解体方法の一頭は、いつものようにボイラーが無かったので一斗缶を焚き火にかけて湯を沸かし、大きなクーラーボックスで70℃~80℃くらいの温度に調整してイノシシを漬けました。(熱湯だと毛穴が熱収縮してしまうのでダメ)

一度に剥けない場合は何度かお湯に漬け、毛穴を拡げて抜きます。

こちらの解体方法は私がいつもやっている方法で慣れているので、一参加者の私も教える立場に回ります(笑)。

内臓を抜いた後、あばら骨を外している場面。皆さん真剣です。
「ここの腿の内側に付いているのがヒレ肉。あばら骨を外した下がバラ肉。背骨を外した横の大きなお肉が背ロース。」
など皆さんが知ってる部位の名前で解説をしてみました。
「え!?バラ肉ってこんなに薄いの? ヒレ肉もこんなに小さい…」
「はい、このくらいの大きさだとこんなものです。普通にスーパーで売っている豚肉の豚がどれくらい大きいかって感じですよね。たぶん200kg~300kgくらいはあるんじゃないかな。」
ほぼ解体も終了し、お肉の一部を炭火で焼いているところ。

この頃になると少し張り詰めた雰囲気から開放されて、ようやく笑顔も見えていますね。
そうだろうなぁ、命をいただくという事はかなりエネルギーが必要な行為ですし、皆さん相当に緊張されていたのでしょう。
私も狩猟に行った時、特にナイフで刺し止めをした場合などは酷く疲れているのが分かります。
それは山を走ったり暴れるイノシシを押さえ付けることによる肉体的なものではなく、命と命が対峙しぶつかりあったことによる精神的な疲労感から来るものです。
焼きあがったスペアリブ。

皆で手を合わせ
「いただきます!」。
焼けたお肉を頬張りながら暫し談笑。
今日の「命をいただく」ということの感想や料理の話、狩猟の話やどの野生鳥獣のお肉が美味しいか、野生鳥獣による農業被害の話…、話題は多岐に渡りました。
生き物を殺して食べるという経験はほとんどの方が初めてのようでしたが、それぞれに色々なことを感じられたようでした。
それは参加者全員が違った感じ方だったでしょうし、もちろん正解も間違いもありません。
私は幼少時に親戚の家に行って鶏を〆て食べたことや、少年時代に親父の狩猟に付いて行って半矢の獲物を手にした時のこと、自分がハンターになって初めてナイフで刺し止めをしたことなどを思い出しながら帰路に着いたのでした。
お招きいただいた主催者さん、そして参加者の皆さん、色々とお世話になりました。
私にとっても貴重な経験でした。
ありがとうございます。
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普段は麻痺してる「考え・想い・感情」を改めて見つめ直す事が出来ました。
これからも「現場」からのお話をドンドン発信して下さい!!!
楽しそうだな〜、
美味そうだな〜。
実際美味かっただろうな〜〜。
命を奪って肉を食べるというありがたさに気がつければ、スーパーに売られているナスや人参にも感謝する気持ちが生まれますね。
なんか自分自身もライフワークの原点に帰ることができた感じです。
残酷で楽しくて美味しい会でしたよ。
お魚や野菜も元々は命があるものですし、無駄にはできません!
私の父は東北の農家の出で、子供の頃は雀を捕っておやつにしたりしてたそうですが、私自身は一切そういう経験がありません。
こういうの参加してみたいですね。
「釣りが趣味」って人は多いのですが、別に変な目では見られませんよね。
狩猟だって本質的には同じはずだと思うのですが・・・
強制はできませんけどね
まぁ、そういう方は、モノノケ姫かジャングル大帝にでも嵌っててください。(笑)
スーパーのパック肉だと命の重みがわからないままですから、よい企画だと思います。
うちの子供4歳 2歳にも機会があれば是非体験させたいものです。
本質的には同じものだと思うのですが、動物を可愛がることが大切だということも理解できます。
しかし、だからこそ日々食べているお肉の起源について目を背けてはいけないと思うのです。
はい、本当に「命を活かす」という考え方は大切ですよね。
動物を可愛がることも大切ですが、自分の口に入る食べ物の起源を知ることは同じくらい大切だと思うのです。
このイベントも「お子様達に伝えたいことがある」とのことで始めた企画です。
とても大切なことだと思います。
狩猟関係を検索していてたどり着きました。
最近は、魚すらスーパーで捌いてもらうのが多いと聞きます。
鶏にしろ、豚にしろ、牛にしろ、魚にしろ、どこかで・誰かがこうやって
命を奪う作業をやっている事を、もうちょっと皆で知って欲しいですよね・・・
PS.うちの近所で、獣の被害が増えてきたので狩猟免許の取得及び
散弾銃の所持許可に向けて動いてまして、その関係で検索してました。
そうですね、現代社会は分業化が進んでいて、自分の食べている食べ物のルーツを知ろうと思っても分からないように包み隠されていますもんね。
私はそれは絶対に間違いだと思うのです。
狩猟免許&銃砲所持の試験頑張ってくださいね♪
原点を見る思いがしました
はい、「いただきます」という言葉はとても大切な言葉だと思うのです。
これからも大切にして生きたいです。
美味しいものが好きで、高じて今年から本格的に罠猟を始めました。
山に入る度に、毎回新しい発見があり、夢中になってしまいました(笑)
イノシシはオスしかとれなかったので、来期はメスを獲る事、また狙った個体をピンポイントで獲れる事を目標に頑張ります。
こちらのブログで勉強させて頂きます。長文失礼しました、なんだか楽しそうで思わずコメント残してしまいました。
それを、面白半分にアアだこうだと論評しているコメントにこのブログを紹介している奴が居ました。
またぞろ、アホナ乱入者が出てきませんように。
また、いつも訪問ありがとうございます。
おお、初めての猟期でイノシシを獲るなんてすごいじゃないですか!
素晴らしいです♪
これからもよろしくお願いします。
まあ、他の人のことはほっときましょう。
あんまり変なコメントは困りものですが、「我は我が道を行く」です(笑)。