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食べる事と、命をいただく事について考えます。 狩猟、素潜り、釣り、採集、手作り等々

負傷ニワトリと傲慢な猟師の価値基準

少し前の事になります。

この頃、私は悩んでいました。
それは庭に放し飼いにしている鶏のブラウンさん達が脱走するからです。

最初は、上下2段重ねにしている防獣ネットの隙間から逃げたのかと思い、きっちりと隙間なく結束バンドで締め込みました。
2022.12.12片羽根1

しかし脱走は続き、「飛んで逃げたのか」と防獣ネットを3段に高くしてもダメ。

地面とネットの隙間はピン止めしていましたが、所々隙間が出来ていたのでピンを追加して土盛り+ブロック設置。
それでもダメ。

庭木の枝が茂っていたので、ネットを掴んでそこから外部に出ているのかと短く選定しましたが、これもダメ。

帰宅するたびに敷地外に出ているブラウンさん達を抱えて連れ戻し、ヘッドライトを照らしながら脱走経路を探しますがはっきりせず。
「毎日の事だから必ずどこかに逃走経路があるはず。こんなことでは本当にハンター失格だな…。」
(後日、網自体が使用限界で大きく破れていることが判明)


そんなある日に事件は起こりました。
4羽いるブラウンさん達の内、3羽しか回収できなかったので隣の田んぼ(他人の物)を捜索。
稲刈りが終わったばかりで、落ち穂を目当てに侵入していたことが度々あったからです。

「いない…」
ハッと思ってワンコゾーンを探しますが、羽毛も散らばっていないし特に異常なし。

「猛禽類か野良猫に連れ去られたんだろうな」
捜索しても見つからず、諦めかけた時にふとアイデアが浮かびました。

鶏を保護対象として見ているふじを探索に使うことです。
ふじは何度も小さなヒヨコと共に過ごしてきていましたし、カラスがヒヨコを狙っている時もすごい迫力でいつも追い返していたのです。
(モリとカヤはダメでした。2頭で競い合ってニワトリを獲物としか見ていません)

ロングリードを付けてふじを田んぼに連れて行くと、すぐに草叢に鼻を突っ込み「キュンキュン」と鳴き始めます。

草叢の中を見ると見慣れたニワトリ。
抱えるとすぐに負傷していることが判明。
片方の翼を失っていました。
2022.12.12片羽根4
「猛禽類に襲われた傷じゃないな。野良猫にやられたんだ」

抱きかかえて帰宅。
急いで鶏小屋の産屋にワラを敷きつめて入れ、水とエサを少し強引に口に運び、他のニワトリと隔離して寝かせました。
(ニワトリは赤い部分や負傷した傷を突く性質があるため)

「エサを食べたけれど傷が深い。明日の朝には冷たくなっているだろう…」
そんな事を思って鶏小屋を後にします。


そしてワンコ達にご飯を与えるために犬部屋に入ると、傷を負わせた犯人が分かりました。
イトの側にニワトリの風切り羽が何枚も落ちていたのです。
2022.12.12片羽根7
(我が家に来たばかりの頃)

ワンコスペースと田んぼはワイヤーメッシュで区切られていますが、メッシュのすぐ向こうは田んぼ。
脱走して田んぼに出たブラウンさんの一羽が、ワイヤーメッシュ横の青草を啄んでいる時にイトが片羽根を咥えたのでしょう。

「ま、猟犬だし本能だからしょうがないよね」
実際に鳥猟に行くと「羽折れ」と言って羽根の骨が折れて仕留めることはよくあるし、鳥の血なんてハンターである私には日常的によく見る光景でした。

それに猟犬として成長段階にあるイトを「動くものを獲っちゃダメ」と叱り過ぎると、本能として持っている猟欲をスポイルすることにもなるので、それはそれで叱り方が難しいところでした。

飼っている猟犬候補の子犬が自分ちのニワトリにちょっかいを出して、ニワトリが傷を負ってしまいました。
という、猟犬を飼っているハンターにとっては「よくある話」でした。


と、ここまでは良いのですが、これから先の話に異変が。

妻(一応います)が「胃が痛い…。吐き気がする」と言って長いことトイレに籠ってしまったのです。
幸い吐くことはなかったのですが、出てきた彼女の顔色は蒼白で泣いていました。

「うっうっ、もう無理。限界…」

その言葉を聞いて愕然としました。
妻は何度か狩猟の現場にも付いてきて、我が家の猟犬の活躍や獲物の解体の様子を間近で見ていたので、「狩猟に理解がある」と単純に思っていました。
しかしそれは私の傲慢な思い込みに過ぎず、彼女なりに私の夢中になっている狩猟という未知の世界を頑張って理解してくれようとした結果に他なりません。

その無理が今回の件によって表面化したのでしょう。
私にとって猟犬は山へ行く大切なパートナーですが、ニワトリ達は卵を産んでくれる草抜き要員に過ぎません。
なので「イトは子犬だししょうがないね。ニワトリはせっかく卵を順調に産んでくれていたのに残念だ」くらいにしか思いませんでした。

しかしながら彼女にとっては犬もニワトリも可愛がり庇護する対象であり、互いが傷付けあうなどと言うことが想定外の出来事だったのでしょう。
それにケガや血に関しても無防備でしたしね。


「今食べているお肉のルーツを知らないなんて言うことの方が問題だ。だから平気で食品を廃棄するし、命を無駄にすることの方が残酷だ!」
常々そう思っていましたし、私にとって今でもその考えは変わりません。

だけど「食べ物を獲ってくる」などという事の方が現代社会においては野蛮な行為であり、一般の方からみると「全く理解できない」ことであることは間違いありません。

ブログの記事を書く上で私なりに各方面に対して気を使っているつもりでしたが、肝心な最も身近な人間が涙を流して悲しんでいるのを見ると、自分の配慮の足りなさを恥じました。
もう本当に「狩猟をやめてしまおう」と思ったくらいです(実話)。


傷付いたニワトリには出来る限りのことをしてやることにして、ワンコ用の抗生物質を体重の分量計り、練りエサに混ぜて与えました。
その後はエサも水も摂り続け、そしてとても驚いたのですが、そのニワトリはケガをしても3日間卵を産み続けました。

傷跡は痛々しく感染症の惧れもあるので「力尽きる前の最後の灯だろうな」と思っていました。
4日目以降は卵を産まなくなったのですが、しかしとても元気。

「ダメだろうな。明日にでも小屋の中で冷たくなっているだろう」
と毎日思っていたのですが、傷口も見る見るうちに治り元気に庭を歩き回っています。
2022.12.12片羽根5
(一番右がケガをしたニワトリ。左羽根が無いのが分かりますか?)


「まあ、生きてくれているだけで充分だ」
そんな事を思っていたある日、驚くことが起こりました。

鶏小屋の中の産屋には毎日卵の回収に行くのですが、そこには4個の卵が…。
(若くて元気な雌鶏は毎日一つ産卵する)
2022.12.12片羽根6
(最近の写真。羽毛も生えて来て見た目ではケガが分かりません)

「良かった。本当に良かった…」
心の底から本当にそう思いました。

それからは毎日卵を産んでくれています。


私のハンターとしての狩猟採集生活は変わることはないでしょうが、狩猟をされない方からハンターへ対しての見方に関しては、自覚としてかなり変わりました。

それにしても本当に良かった。


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コメント
No title
こんにちは、
色々な意味で、じんわりさせられるお話でした。
奥様もブラウンさんも、回復されてよかったですね。
2022/12/14(水) 10:38 | URL | dohira #-[ 編集]
ワンコは猟、癒し係、鶏は卵、草抜き係と役目は違うけど。
どちらも家族なんですよね。
お互いが傷つけ合わないように今後は気をつけて下さいね。
一度しかお会いしてませんがいい奥さんじゃないですか、
独り身には羨ましい限りです。\(//∇//)\

2022/12/14(水) 22:10 | URL | 坪ちゃん #JalddpaA[ 編集]
答えが思いつきません
いつも楽しく読んでいます。
私は鳥猟をやります。台所で捌くのを家族も見ていましたが、妻や子供には理解があると思い込んでいました。
ブログを読んで、一度家族と話をしてみようと思いました。
2022/12/15(木) 10:02 | URL | 善行 #QcBTkJbU[ 編集]
ウチはシカ撃ちだけカアチャンと行きます。彼女の力量から林道をゆっくり歩いて獲れれば解体(搬送)を手伝ってもらうスタイルです。彼女は本当は嫌なのかもと考えたことは有りませんでした。今後飼いたい犬についても話をしてみます。
2022/12/16(金) 14:25 | URL | デビラ #mQop/nM.[ 編集]
dohiraさん
ありがとうございます。
はい、今回は考えさせられる事件でしたね。
とりあえず良かったです♪
2022/12/16(金) 19:23 | URL | じゃん #-[ 編集]
坪ちゃんさん
ニワトリは表情ないけれど、「エサくれエサくれ」と付いてまわるし、様子を見ているだけで癒されます。
とにかく今回はブラウンさんが一命を取り留めてくれて本当に良かったです。
そして猟師に対する一般人の認識を改めて考えました。
2022/12/16(金) 19:27 | URL | じゃん #-[ 編集]
善行さん
はじめまして!コメントありがとうございます♪
いや~、今回のことはとても考えさせられました。
やっぱり家族の理解あっての狩猟活動だと再確認した次第です。

今後ともよろしくお願いします。

2022/12/16(金) 19:30 | URL | じゃん #-[ 編集]
デビラさん
デビラさんの奥様にも本当の本音を聞かれることをお勧めいたします(笑)。
無いとは思いますが
「イヤイヤ付き合っていた」
何て言われたらショックですよね。

今回の我が家の件は、生理現象なので考えてしまいました。
やっぱり理解してくれる家族が居てこそのことですよね。
2022/12/16(金) 19:33 | URL | じゃん #-[ 編集]
お久しぶりです(・∀・)
奥方に言われて初めて気づく事ってありますよね。

でも元気に復活して良かったですね。
2022/12/18(日) 20:08 | URL | rossi #-[ 編集]
うーむ
お久しぶりです。
私自身が狩猟になんの抵抗もなく割りきってるせいか辛い場面も全部含めて受け止めてしまうのであまり感情移入しないようにしてます。凄く一般の方には気を使ってますが生活の一部ゆえに慣れちゃダメだなぁと考えさせられました。鹿の解体もいろいろ克服するためにしてますしね。貴重なお話、ありがとうじゃんさん。
2022/12/24(土) 20:30 | URL | 小隊長 #-[ 編集]
rossiさん
はい、回復してくれて本当に良かったと思います。
ヒヤヒヤしましたよ…。
2023/01/01(日) 01:07 | URL | じゃん #-[ 編集]
小隊長どの
ご無沙汰しています。返信遅くなりすみません。

バタバタと忙しい毎日ですが元気に過ごしています。
はい、今回は本当に色々と考えることがありました。
気を付けないといけませんね。

今年もよろしくお願いいたします。
2023/01/01(日) 01:10 | URL | じゃん #-[ 編集]
No title
私の実家での話です。
猫25匹 犬7頭 父母兄貴二人僕の5人家族 都内戸建住み
家で生まれた子猫が成犬一匹に頭を食べられてしまった事を思い出しました。(口の周りに血と歯茎に猫の毛が付いていました)
当時はとてもショックで同じ家族の中でとんでもない事が起こってしまった。この子は殺猫犬だ なんて思ったのを覚えています。
当の本人食べてしまった犬はキョトンと可愛らしく寄って来る。
遊んでるうちに少し噛んで血の味がしてきっと本能で噛みちじってしまったのだろう。元々は狩をして命を繋いでいた生き物を人間が懐かせて一緒に暮らしている事を実感したのを覚えています。
狩猟犬であるイトちゃんも同様、遊ぶつもりが気づけば食べてしまったのかもしれませんね。。
次に家族と会う時に食べられてしまった猫と、既に亡くなった犬を思い悼む機会を作ろうと思います。
ブラウンさん達はじゃんさんご一家のとても大切な家族と認識しています。
ふじが見つけてあげられた事、ブラウンさんが無事に元気になっている事、安堵と奥様の気持ちが伝わり涙しながらコメントさせて頂いております。ホシノさん達が亡くなった時も目頭熱く拝見させて頂いていました。
じゃんさんのブログは東京でサラリーマンをしている僕にとって未知な世界を垣間見させて頂ける大切な場所です。
面白おかしく温かい話し、時には悲しく考えさせられるじゃんさんのブログをこれからも応援しています。
気持ちが強くなり乱雑な長い文章申し訳ありません。。
2023/01/31(火) 13:22 | URL | fumiaω #-[ 編集]
fumiaωさん
はじめまして!コメントありがとうございます♪
いや、コメントの最初の部分だけを読むと、てっきり愛護の方かと思いました。失礼いたしました。

あたたかいメッセージありがとうございます。
私の様な生活をしているのは、現代社会では異端なのだと思います。
でも自然の中や狩猟を通じて学ぶことは多いですね。

これからもよろしくお願いします。
2023/02/01(水) 21:41 | URL | じゃん #-[ 編集]
家族
初めまして。偶然見かけて、心配になりましたが、
無事に治ったようで(不自由はあるでしょうが)、良かったです。

私にとっては、ニワトリは家族で娘です。
卵を産むとそのぶん寿命が縮むため、出来るだけ産ませないよう頑張っています。でもどうしても産んでしまうので、体力が戻るまで2か月ほど抱卵させています(無精卵なのでかえりませんが)。

私は肉も卵も食べなくても生きていけるし、少しでも長生きしてほしいと思っています。でも夫が食べるのでとても複雑です。
家にニワトリがいるのに、チキンを食べてきたと言われると、隠れて泣いてしまいます。そんな残虐なことよくできるなと。私にとっては、彼が鶏肉を食べるというのは、子供を虐待したり、犬や猫を食べるのと全く変わりません。

ちなみにうちの猫は、絶対に傷つけません。
家族だからです。死んだら終わりです。

鶏は、とても賢くて強くて自己管理がしっかりしてて、教わることばかりです。偶然見かけた記事ですが、元気になってくれて本当によかったです。
ワンちゃんは、怒るのではなくて、家族として手を出したらダメっていうのを教えたら理解すると思いますよ。

どちらも可愛がってあげてくださいね。
突然失礼しました。
2023/04/18(火) 02:15 | URL | ニワトリLOVE #-[ 編集]
ニワトリLOVEさん
はじめまして!コメントありがとうございます♪
本当にニワトリを愛されているのですね。

親犬のふじはニャンコともニワトリとも仲良しです。
どの犬も同じように上手くいくと良いのですが…。
2023/04/23(日) 08:12 | URL | じゃん #-[ 編集]
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プロフィール

じゃん

Author:じゃん
幼少時より食い意地の張った子供で、今でも野生の動植物を見る時には
「美味いか不味いか?」
が大きな判断基準を占める。

素潜り、釣り、手づかみなど様々な方法にて「タダの食料」を捕獲することに情熱を燃やしています。
2009年より狩猟界にデビュー。タンパク質自給率100%達成なるか!?

E‐mail
capturefood@yahoo.co.jp
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