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食べる事と、命をいただく事について考えます。 狩猟、素潜り、釣り、採集、手作り等々

親父の引退

昨年度の猟期末の話。

射撃の上手い親父が至近距離を走る獲物に対して、失中(外すこと)することが何度かありました。
失中自体は誰でも起こりうることなので、そんなに気にもかけていませんでした。

解体して山の神様祭りをする時に
「親父さんもそろそろヤキが回ったんじゃないの?」
「そろそろ銃を置く時期が来たかぁ。惜しい人を失った…」
などと言って皆さんにからかわれてはいましたが…(笑)。


しかし猟期が終わり眼科で診察してもらったところ、利き目である左目の「眼底出血」との診断。
眼の奥にある毛細血管が切れて出血し、それが原因で一部の視界が失われていたのです。

毛細血管の出血を止め、染み出た血液が吸収される治療を行いましたが、完全に元通りにはなりませんでした。
なんとか回復するように複数の眼科医を受診。

左目のほとんどの視界は回復したのですが、皮肉なことに銃の照準を合わせる中央部分だけが視野欠損。
(スコープの中心部の十文字の部分だけが見えないと思ってください)

親父は利き目が左で、猟銃も左構え。
年齢も75歳を超えた後期高齢者です。
まだまだ身体が元気だとは言え、ついにその時が来たのだと思いました。

哀しいことですが「親父もついに銃を置く時(猟銃所持許可を返納して狩猟をやめる時)」が来たのです。

「ハンターの誰しもにいつかやって来ることでもあり、覚悟はしていたけどいきなりだもんなぁ…。
そりゃ足も衰え銃を持つ腕も上がらないと言うなら納得も出来るけど、まだまだ元気だからもう少し親父と一緒に山へ行きたかったなぁ」

このことを猟隊のメンバーの何人かに相談しましたが、誰もが同じように感じたようです。


親父がいるからこそ始めた狩猟で、私が狩猟を始めてからずっと一緒に山へ行っていました。
「これからはオレ一人でも頑張らないとな。たまには肉の差し入れでもしてやるか…」
少し腑抜けて、それでも始まる次の猟期の準備を考えざるを得ません。

ナイフ、銃の負い皮(肩にかける紐)、弾帯、ベルト、犬笛…。
道具を手入れしていると、私の狩猟装備のたくさんの物が親父の手作りの物であったことを改めて思います。

「猟隊のたくさんの仲間が待っているからな…」
そうは思ってもポッカリと心の一部に穴が開いて気合が入りません。


そんな事を思っていましたが、猟期が始まると何事も無かったように元気な親父の姿がそこにありました。
2022.03.22親父の引退5

「問題なのは中央視野だけだからな。右打ちにフォームを矯正して銃を改造した(届出及び許可済み)」
あっけらかんと言う親父。

グリップ形状を右手でしか握れない様に改造したのです。
2021.12.30親父の引退6

「でも狙いを付ける利き目はどうしたんだ?」

普通の人はあまり意識したことが無いかもしれませんが、利き腕や利き脚があるように目には利き目があります。
そしてそれが自分の利き手と逆な場合は、射撃フォームを矯正した方が早いくらいに変更が出来ません。
(私の場合は時々左右の利目がスイッチするので厄介なんですが…)

「ああ、それは右目だけで狙えるようにドットサイト(という光学機器)を取り付けた」
2021.12.30親父の引退3
(親父の視点から撮影。レンズ中央部分の赤いマークに着弾するように調整)

「状況判断は両目で行って、撃つ瞬間は片目を瞑って右目で撃つ。視野の欠損は左目の中央のごく一部だけだから車の運転も問題ない」
2021.12.30親父の引退7
(丸印が改造部分)


「理論的には可能な事だろうけど、動く獲物を撃つわけだしそんなに簡単に出来るわけないじゃないか…」

それに親父は長い間クレー射撃をやり込んできて、時には90点/100点満点以上のスコアを出していました。
逆にそれが親父のフォームのスイッチが簡単に出来ないだろうと思っていた理由でもあります。
野球やゴルフのトップ選手に、「来年から逆フォームでやってくれ!よろしく!!」というようなもんですからね。


しかし今年の猟期が終わると、グループ内でトップタイの16頭のイノシシ・鹿を倒していました。

クレー射撃を本格的にやっていた時には、寝る前に毎日据銃(きょじゅう。銃を降ろした状態から瞬間的に銃を構えること)練習をしていた親父です。
この猟期終わりにどれだけ慣れない右構えの据銃練習をしてきたかは、想像に難くありません。


「そうは言ってもいきなり獲物が出てきた時には、慌てて左構えに銃を挙げて撃てなかったことが何度もあったけどな」
事も無げに言う親父。


親父の引退はまだまだお預けみたい…。

もう少し目の上のタンコブ親父と一緒に狩猟をすることが出来そうです(笑)。


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コメント
No title
親父さん・・・


本当に狩猟が好きで楽しいんでしょうね。
少しでも永い狩猟生活が出来るといいですね。
2022/03/22(火) 01:07 | URL | 黒い箱 #-[ 編集]
いやぁ、高齢になってからのフォーム変更なんて、
流石、じゃんさんの親父さんですね。
こりゃ当分親元越えは難しいですね♪
(^ω^)
2022/03/22(火) 06:45 | URL | 坪ちゃん #JalddpaA[ 編集]
弘法筆を選ばず、天才は場所を選ばない。
出来ない事に囚われず出来る事を成し遂げる切り替えの早さが凄いです。
まだまだお元気で狩猟を続けられるのが何よりですね(^^)
2022/03/22(火) 09:19 | URL | $有銭$ #-[ 編集]
脱帽
精神力の強さ、親子揃って素晴らしいですね。
見習いたいものです。
2022/03/22(火) 10:13 | URL | dohira #-[ 編集]
No title
親父さん、若い!精神的な若さがありますね。
こういう高齢者を見ると、腰痛・膝痛で心折れていた自分が恥ずかしくなります。
若い親父さんをもっと見ていたいですね。
2022/03/22(火) 12:13 | URL | グランドフォール #5lgk84Pk[ 編集]
No title
先日もこともなげに話されていましたが、好きな事とは言え成し遂げるまでの努力は相当なものであったと思います。長老勢子さんもそうですが、猟隊の先輩方の若さとバイタリティには本当に驚かされますね。
些末な事で思い悩み、諦めようとする弱い自分に喝を入れられたような気がします。私も既に立派な中年ですが、いつか先輩方のように背中で語れる人になりたいなと思います。
2022/03/22(火) 17:59 | URL | ゲストハンター #HfMzn2gY[ 編集]
お父様すごいです。ご自分を冷静に客観視できるからこそ、ですね。
2022/03/22(火) 20:27 | URL | まっちゃん #-[ 編集]
No title
お父さん、かっこよすぎる…!!😭
まだまだ現役でよろしくお願いしますっ!!✨
2022/03/22(火) 20:34 | URL | オイノコ #-[ 編集]
No title
 歯医者で、老眼ではないといわれてますが、目のピントがあいにくく、拡大鏡を使い仕事をするようになり1年ほど。スピードやその他もろもろで自分の今までの技術に追いついてない感じで、ストレスいっぱいでしたが・・。考え変えました。お父様のように生けてるおやじ目指してがんばります。勇気をありがとうございます!!! いつも楽しく拝見させていただいてます!
2022/03/22(火) 21:19 | URL | 通りすがり #-[ 編集]
凄いなあ
サウスポーから右に変えるなんてすごいことだと思います。
一度左にかまえてみましたが違和感ばかりでした。
やる気次第なんだと勇気を頂いたような気がします。
2022/03/23(水) 15:08 | URL | デビラ #mQop/nM.[ 編集]
黒い箱さん
お久しぶりです♪
アオリイカゲットおめでとうございます。

本当に好きなんでしょうねぇ~。
今回は少し呆れてしまいましたよ(笑)。
2022/03/23(水) 21:39 | URL | じゃん #-[ 編集]
坪ちゃんさん
はい、正直言ってビックリしています!!
私も無理でしょうねぇ~。

そんなこと言いながら、将来的にスイッチしていたりして(笑)。
2022/03/23(水) 21:40 | URL | じゃん #-[ 編集]
$有銭$さん
お久しぶりです!!

いやいや、天才でもなんでもなく、只の狩猟好きなんでしょう。
でも「好きこそものの上手なれ」という言葉を思い出しました。
好きって大切ですね♪
2022/03/23(水) 21:43 | URL | じゃん #-[ 編集]
dohiraさん
いや~、こう見えて私はヘナチョコです(笑)。
でも後期高齢者である親父が頑張っているから、私も頑張らないといけませんね♪
2022/03/23(水) 21:47 | URL | じゃん #-[ 編集]
グランドフォールさん
はい、こうやって記事にすると「若いな」と思ってしまいますね。
あっちこっち「痛い」と言いながら、やっぱり狩猟が好きなんでしょうね♪
2022/03/23(水) 21:53 | URL | じゃん #-[ 編集]
ゲストハンターさん
今猟期はお疲れ様でした。
ウチの猟隊に来て、誰もが一番の収穫であることは「40、50(歳)はハナタレ」と笑い飛ばせることだと思います。
私もいつまでも初心者です。

先輩方を見習って、死ぬまで精進できそうです(笑)。
2022/03/23(水) 21:57 | URL | じゃん #-[ 編集]
まっちゃんさん
いやいや、「自分を冷静に客観視できていない」からこそのフォームのスイッチだと思います(笑)。

気持ちだけは若いことが分かりました…。
2022/03/23(水) 21:59 | URL | じゃん #-[ 編集]
オイノコさん
お久しぶりです♪

いやいや、このコメントを見て親父が調子に乗るといけないので、オイノコさんのコメントはひっそりと削除いたします(笑)。
2022/03/23(水) 22:01 | URL | じゃん #-[ 編集]
通りすがりの歯医者さま
はじめまして!コメントありがとうございます♪

私も50歳を超え、色々と身体に変化が出て来ています。
「老い」と考えるのか、それとも「進化」と考えるのかは微妙なところですが、親父を見習って前向きに「成長」と考えるようにしています。
前向きすぎますかね(笑)!?
2022/03/23(水) 22:04 | URL | じゃん #-[ 編集]
デビラさん
この事があって私も逆方向に構えてみました。
正直な話、違和感ばかりでまったく「引鉄を弾く」ことは無理だと感じました。

でも、後期高齢者でやる気がありすぎるのも困りものだと思いましたよ(笑)♪
2022/03/23(水) 22:07 | URL | じゃん #-[ 編集]
私めも
遅ればせながらの投稿でご免なさい。老人ホームのショートステイから帰って来ました。
私はカメラマンが仕事でした。70過ぎた頃右目が黄斑前膜でピントが合わなくなりました。世界中のカメラで右目で覗かなくていいのはローライ35だけ。そこで「爺」は考えた。片目が無理なら両目で見よう。黒い布を冠って両目でピントを合わすビューカメラに変えました。それで一応急場は凌げましたが、やはり撮影にはオールラウンドには行きません。オートフォーカスの出現に少し救われました。お父様の場合はまだ若いです。右目に移行する事をお勧めします。人間の本来の効目は右ですから。私は不自由な左目でガンバッております。頑張れお父さん!!!!
2022/03/24(木) 13:55 | URL | 爺 #-[ 編集]
No title
いやいやいや素晴らしい親父さんですよ(・∀・)

努力・知識・工夫で目の不自由をものともせず!

素晴らしい( ー`дー´)

ワシもこんな親父さんが欲しかった(´・д・`)
2022/03/25(金) 16:32 | URL | rossi #-[ 編集]
爺さま
爺さまも色々とご苦労をされたのですね。
確かに一眼レフカメラも片目ですね。

親父の場合は残された右目が無事だったのでスイッチ出来ました。
フォームの矯正は大変だったと思いますが…。
2022/03/26(土) 12:39 | URL | じゃん #-[ 編集]
rossiさん
ありがとうございます。

健康が一番なのですが、起こったことに対して嘆いてばかりではどうしようもないですもんね♪
2022/03/26(土) 12:55 | URL | じゃん #-[ 編集]
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プロフィール

じゃん

Author:じゃん
幼少時より食い意地の張った子供で、今でも野生の動植物を見る時には
「美味いか不味いか?」
が大きな判断基準を占める。

素潜り、釣り、手づかみなど様々な方法にて「タダの食料」を捕獲することに情熱を燃やしています。
2009年より狩猟界にデビュー。タンパク質自給率100%達成なるか!?

E‐mail
capturefood@yahoo.co.jp
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