20~30年ほど前のこと、『美味しんぼ』というマンガで、主人公の山岡士郎がこう言い放っていたのです。
「鴨は目玉が腐り落ちるくらいまで熟成させるのが美味い!!」今の様にネットなどが無い環境で、『美味しんぼ』というマンガは数々の伝説的に勉強となるような料理(調理)事実を世に出してくれた革新的なマンガでした。
(胡散臭いものや、完全に間違ったものはありましたが、そこはまあご愛嬌という事で…)
しかしこのセリフを見た時に、素直にこう思いました。
「ええ~っ!絶対ウソじゃん!! だってそこまで行くと肉も腐っちゃうよ!!」それから微生物学や食品工学などを学び、腐敗や発酵に関する実験を行いました。
(腐敗も発酵も基本的に同じもので、人間にとって好ましいものが発酵となります)
就職も興味のあった食品会社の研究分野。
それから更に年月は過ぎ、自分が狩猟を始めるようになったのが今から12年前。
「う~ん、今思えば雪国で寒晒しにした状態(低温で湿度が低い)だったら、山岡士郎のいう鴨はとても美味しい状態になっているだろうな」
ということは想像できます。
私は比較的暖かい地方に住んでいるので、肉の長期熟成は屋外では無理です。
(時々野良猫に持って行かれたりもします。笑)
なので、肉の長期熟成は基本的に冷蔵庫内で行います。
しかしやはり雑菌が繁殖しやすいことは事実です。
そこで熟成肉を作る場合は、アルコールを使用して殺菌していました。
(子イノシシの腿肉を一本もらって生ハムを作る際は、調味料入りのアルコールに漬け込んでいた。この方法はかなり上手くいきました)
除菌の3原則
・菌を付けない
・菌を増やさない
・殺菌する
のルールを守ることはとても大切だと思います。
で、これは親父が獲った鴨の写真。

最初はきれいに毛を毟り、腹腔内にキッチンペーパーを詰め、体表(特に腋の部分や太腿の下など水分が溜まりやすい場所は入念に)をキッチンペーパーで包んで水分を除去します。
その後登場するのがこれです!
ガスバーナー!!(私の持っているのはDIY作業用ですが、何でも構いません)
3~4日毎に冷蔵庫から取り出し、ガスバーナーで炙って殺菌します。
肉を熟成させると雑菌が増えるのは当たり前のメカニズムですが、表面や腹腔内を焼いて滅菌することで必要以上の細菌繁殖を防ぎつつ肉の熟成を行います。

家畜などと違って狩猟鳥獣は自然の中で捕獲しますから、細菌数のコントロール(特に銃猟で獲った獲物)は難しいものだと思います。
しかし時々ガスバーナーで軽く炙って殺菌することで、比較的上手く熟成させることが出来るように感じます。
(最初から内臓を破っている場合などは、腸内細菌で汚染されているので無理です)
ま、この方法だと食べる時には「タタキ」の様に軽く表面に熱が入っている状態になるのですが…。
(不要な部分はトリミングしてワンコのエサになります)
10日~2週間(長い時は3週間ほど)熟成した肉を、ステーキ等のシンプルな料理にすると肉の旨味が深くなってかなり美味しいです。
親父からは
「え!?それは無理だろ。肉が腐らないのか?」
と言われました。
私自身も獲って来てすぐに食べる場合も多いですし、「限界に挑戦」的な無謀なチャレンジをしている訳ではありませんので無理にお勧めはしません。
心理的にも「一番美味しく食べられる時」が、その人にとっての食べ頃なのだと思います。
でもガスバーナー、お勧めですよ♪
刺身の炙りを作ったり市販の焼き鳥の表面だけ炙るだけで、ちょっと料理がうまくなった気がしますから(笑)。
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寒いとカセットボンベは火付きが弱いので、
このプロタイプ使ってます♪
犬舎の掃除で出たカールさんの抜け毛を焼いたり、
冷凍の猪の骨を溶かしたり、薪の火付けに便利です。
鴨も3日ぐらいしか寝かせた事がないので、獲物の状態の良い時に長めに置いてみようと思います。
因みに、鴨を寝かせる時、肉に入った散弾はどうされていますか?
最近は料理の用途が多いかな。
炙りアナゴとか最高です♪
散弾が入った跡は、そこが血肉になるので傷口を焼きつぶすようにバーナーで焼いています。
しかし血肉になった場所は、基本的には長期保存は無理ですね。