「すみません、折り入ってお願いがあるんですけど…」
出社するとすぐに総務部の若手社員が私のデスクにやって来ます。
「うっ、なんとなくかなり嫌な予感…(汗)」
「会社の敷地内にイノシシが倒れているんです。まだ生きています。力を貸してください」
「いや、今は猟期じゃないからオレが殺すことは出来ないし、この場所は所属する猟友会の行政区と違うから知合いの有害鳥獣駆除隊員に応援を要請をすることも出来ないんだよね。死んでいたりしたら遺体を運ぶお手伝いくらいはできるけど…」
まあ、とりあえず現場に向かいます。

なぜかぞろぞろと老若男女入り混じったギャラリーが付いてきます。
その中にはかなりお偉い人も…。
現場に近付くと遠くからでもカラスが寄ってきているのが分かります。

15kg程の子イノシシ。
今年の早春に産まれた個体だな。
前足を盛んに動かしていますが、もう立ち上がる力は残っていません。
一目見て「長くはないな」と理解します。
しかし一体なぜこんな場所に倒れているんだろう?
うちの会社の社員が車で撥ねたなら情報も入って来るけどそれはない。
おそらくすぐそばを走る幹線道路で撥ねられた子イノシシが、瀕死の状態で敷地内に逃げ込んできたんだろうなぁ。
「どうしましょう?」
「杓子定規にそんなことは言いたくないけれど、法律の問題でオレにはどうしようもできない(ハンターであっても猟期ではないので野生鳥獣の命を奪うことは出来ないし、有害鳥獣駆除を行うにもたくさんの規制があります)。
酷だけどこの子イノシシはもうじき死ぬ。
死んだら轢死した動物の遺体を引き取ってくれる産業廃棄物回収業者に電話するといいよ。
長引くようだったら地区の役場の農林事務所に連絡すると、担当の猟友会に連絡が行くから近隣の駆除許可を持った有害鳥獣駆除員さんが来てくれはずだ」
そこまで対応策を話したら、私は外出する用事があったのでその場を後にします。
外出から帰るとイノシシの姿はありませんでした。
「結局どうなったの?」
「取り急ぎ役場に連絡しました。生きていることを伝えると、露骨に嫌な声になって何か所もたらい回しにされました。
で、やっぱり最終的には地区の猟友会に連絡が行って、有害鳥獣駆除員さんがやって来ました」
「うん、たぶんそうなるだろうと思ったよ」
「で、何と言う方が来られたの?」
名刺を見せてもらうと、射撃場でよくお話しする大没さん(仮名)。
取り急ぎ大没さん(仮名)にお礼の電話をします。
「大没さん(仮名)、今日はありがとうございました。実は私の勤めてる会社なんですよ。外出しててお役に立てずにスミマセン」
「ああ、そうなんだね。今度イノシシが来たら罠を仕掛けてあげるよ」
「ありがとうございます。その時はお言葉に甘えさせていただきます」
その後少し社内の関係者と雑談。
狩猟と有害鳥獣駆除の違い、縦割り行政の弊害など…。
「じゃあ、地域を跨いで行き来しているイノシシなんかはどうすればいいんですか?」
なんていう質問も出ました。
そんな事とは関係なく、今日の様子を知っている人からは
「あの人まったく何の役にも立たなかったのよ!」
と言われていることは間違いないでしょうが(笑)。
まあ「よっ!イノシシ殺し!!」とずっと言われ続けるよりマシかなぁ…。
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確かにいますよね、勝手に期待してできないとわかると「裏切られた」って騒ぐ人。
なら最初から自分でやればいいのに( ゚Д゚)
よく考えれば分かることなのでしょうが、銃を所持できるということがいかに法を絡めた難しい事であるという部分を、猟師=銃所持=当たり前、といったように、”害獣駆除の便利屋さん”みたいな”決め付け”の中に成り立たせてしまっているからなのかも知れませんね。
まあしかし、皆さん身近にじゃんさんのような詳しい方がいらっしゃってホントに心強いでしょうね羨ましい♪
今回は同じ会社の同僚だったのでそんなに本気で言っているわけではないですが、有害鳥獣駆除に行くと本気で言われたことがありましたね。
まあ、それも世間がどう思っているかを知る良い勉強でした。
普通はそうだと思います(笑)。
まあ、お役所のどこに電話するとか少しでも役に立てて良かったと思います♪
としても出来ませんよねぇ。
それに「法令遵守」するに越したことはありません。
でも、もしこれが誰もいない山の中だったら・・・
懇ろに〇〇の中に葬ってあげたことでしょう。
も、もちろん「土」の中にですよ。
まあ、スマホを出して撮影している人(私も含めてですが)がいたもので…。
こ、これが山の中だったら。。。
〇〇に入る文字は「クチ」か「胃袋」?