食べる事と、命をいただく事について考えます。 狩猟、素潜り、釣り、採集、手作り等々

生きて帰る

「みんな、ちょっと集まってくれ」
各人が見切りを終えて集合すると勢子長が神妙な面持ち。
2017.03.14生きて帰る1

「端木のオヤジ(仮名)がシシ(猪)にやられた。幸い特に重傷という訳ではないけど、本当に殺されかけたらしい。後学のために皆も聞いてほしい」

「えっ!?」
皆の表情が一瞬固まります。


端木さん(仮名)というのは近隣の銃猟ハンターで、私の所属する猟隊とはライバル関係に近いものがあり、決してお世辞にも人柄的に褒められたものではない典型的な一昔前のハンターです。
「ワガママで我が強い」と言えば良いのでしょうか・・・。猟欲が強くて他人との協調性が無く、ちょっと複数の仲間のハンターを引き連れているかと思えば、一猟期も持たずに喧嘩別れする始末。
〔実際に勢子長もかつて端木さん(仮名)と一緒に猟をしていました〕


しかしその人間離れした猟の実力は誰もが認めるところ。
80歳を超えた現在も猟犬を引き連れ、単独猟で山の中を駆け回っています。

私なんぞの駆け出しハンターが見切りをしている時に山の中で出会うと、生物としての強さというか迫力に気圧され、ビリビリと殺気を感じて毛穴が逆立つのを感じたものです。


「あの端木さん(仮名)がシシにやられるなんて・・・」
武勇伝の枚挙に暇がない人物でしたが、危うく本当に死にかけたとのこと。

以下は勢子長から聞いた話を書き起こします。



100kg超えのシシを寝屋から起こして2発弾いたんだ。
首と背骨に間違いなく命中した。

危険を感じたシシは寝屋に籠って出てこない。
止めを撃つために犬の啼いている方向に忍び寄った。

犬の吠えている藪までの距離5メートル。

その場所からではシシの姿が見えなかったから、一歩足を踏み出したんだ。
その瞬間小山のような大きなシシが突進してきた。

銃に残っている弾2発を発射!
だけどシシは凄まじいスピードで2発とも失中。

あっと言う間に宙を舞って地面に叩きつけられた。
シシに突進されて吹っ飛ばされたんだな。

そしてすぐに馬乗りになられてシシが腕に噛み付いてきた。口からはみ出した大きな牙がハッキリと見えたよ。
「腕を持って行かれる!」
噛み付かれながら瞬間的に腕を引き抜いたけど、肉が抉り取られた。

すぐに今度は足元から何度も捲られた(鼻先で突き上げられること。牙で大きな血管を切られると簡単に致命傷になる)。
幸運なことに冬で厚着をしていたのと丈夫なズボンだったから肉に牙が通らなかったけれど、ズボンはズタズタに切り裂かれてボロ雑巾のようになった。
切られはしなかったけれど、突かれて足は内出血だらけ。

なんとか弾を取り出そうとしたけれどそんな暇はない。

次は足首に噛み付かれた。
噛まれた方の足と反対の足で必死にシシの鼻先を蹴りながら、銃弾を撃ち尽くして空になった銃の銃床で何度もシシの脳天をブッ叩いた。

その時に猟犬がシシの後ろからトモ(後ろ足)に噛み付いてくれてなぁ。それにシシが気を取られてなんとか一発だけ銃弾を取り出して仕留めることが出来た。


本当に今回は殺されたと思った。
50年以上シシ撃ちをしているけれど、こんなに恐ろしい経験は初めてだった・・・。



結果的に腕はダメージを受けたけれど全身どこも骨折もせず、状況からすると軽症。


「あの端木さん(仮名)がなぁ。だけどあの人だったからその程度のケガで済んだんだろうな。
これが普通のハンターだったら、弾を取り出すことに執着し過ぎて殺されているよね」

皆でちょっと青ざめた表情で話したのでした。



結局猟の方は、その日は何も獲れずに珍しくボウズ。

しかも猟犬2頭がイノシシの牙で受傷。
重傷でしたが、今のところ幸い命に別状はないようです。


何かと考えさせられ、「出猟したら無事(とは言えないけれど死なないよう)に帰宅しよう」と心に強く思った一日でした。



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コメント
怖いですね。
一度、山の中で大きなイビキを聞いたことがありますが、
多分イノシシ…でも、この音の大きさなら、
相当デカいかも…((((;゚Д゚)))))))
と、静かにその場を離れました。
ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3
憶病者って云われてもいい。ヽ(;▽;)
2017/03/15(水) 08:53 | URL | 坪ちゃん #JalddpaA[ 編集]
No title
これは怖い…。
ベテランだから冷静な判断が出来たのですね。
僕も将来的には散弾持ちたいと思っています。
日頃の鍛錬が書かせませんね。
2017/03/15(水) 10:32 | URL | おにおに #-[ 編集]
怖いですね、猪も命懸けですし、人も命懸けですね。無事で良かったです。


本当に無事安全に猟を終わる大切さですね
2017/03/15(水) 17:43 | URL | みきでぃまき #-[ 編集]
No title
一般的に高齢者と呼ばれる年齢なのに凄いです。
日ごろの鍛錬で身体能力も高いのでしょうね。
2017/03/15(水) 18:55 | URL | 小倉の人 #-[ 編集]
うわ…まさに手負いの獣、殺されなくて本当に良かったです。無事帰還が絶対ですね。

バイクも無事故無検挙無事帰還が絶対と肝に命じています。
2017/03/16(木) 00:28 | URL | $有銭$ #-[ 編集]
No title
生きて帰る これこそが、山を駆ける猟師の命題ですね
死んでも生きて帰らねばなりません
そのためにも、マタギの山言葉が生まれたほどですからね
生きて帰る
どんな猟師も、生きて帰る事を最優先して、猟に向かいたいですね
それは、暴発も銃事故も、獣の逆襲も、遭難も含め
胆に銘じ・・・・山で、猟で、いのちを落としては、猟師ではないですよ
そうありたいと思いますね
2017/03/16(木) 19:33 | URL | kuma仙人 #A1vz8dvw[ 編集]
猪に襲われつつも命が御無事で、本当に良かったです。
なんの事は無さそうな子鹿の簡単そうな止め刺しでも、斜面で蹴られたり体当たりされれば刃物を持ったまま転げて……万が一の事が有りうるのが狩猟が持つ危険な一面だと思います。
獲物を美味しく頂けるのも、命と健康が万全でこそ。当方も今後更に気を引き締めたいと思います。
2017/03/16(木) 19:43 | URL | 槍のナガサKI #-[ 編集]
坪ちゃんさん
ええ、「臆病者」って「賢い」と言い換えることも出来ると思います。
無事が一番ですよね♪
2017/03/17(金) 19:40 | URL | じゃん #-[ 編集]
おにおにさん
はじめまして!コメントありがとうございます♪

経験ってとても大切だと思いました。
私もまだまだ駆け出しのハンターです。
よろしくお願いします♪
2017/03/17(金) 19:41 | URL | じゃん #-[ 編集]
みきでぃまきさん
お久しぶりです♪

ええ、無事に帰ってくることが一番だと思いました。
お互いに安全狩猟で!
2017/03/17(金) 19:43 | URL | じゃん #-[ 編集]
小倉の人さん
ハンターの人は高齢でも超人のような人が多いですよ♪
いつかこのブログで「ハンター列伝」というカテゴリーで、凄い猟師さんの話を書いてみたいと思います。
2017/03/17(金) 19:45 | URL | じゃん #-[ 編集]
$有銭$さん
そうですね、致命傷を負わなくて本当に良かったと思います。

何事も無事が一番ですね!
2017/03/17(金) 19:46 | URL | じゃん #-[ 編集]
kuma仙人さん
そうですね・・・。
kuma仙人さんからコメントをいただいて本当にそう思いました。
山で死ぬことなんかちっともカッコ良いことではないですね。

死んでも生きて帰ることを肝に銘じたいと思います。
2017/03/17(金) 19:49 | URL | じゃん #-[ 編集]
槍のナガサKIさん
はい、互いに気を付けましょうね!

何よりも生きて帰ってくることが大切なことだと思いました。
2017/03/17(金) 19:51 | URL | じゃん #-[ 編集]
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プロフィール

じゃん

Author:じゃん
幼少時より食い意地の張った子供で、今でも野生の動植物を見る時には
「美味いか不味いか?」
が大きな判断基準を占める。

素潜り、釣り、手づかみなど様々な方法にて「タダの食料」を捕獲することに情熱を燃やしています。
2009年より狩猟界にデビュー。タンパク質自給率100%達成なるか!?

E‐mail
capturefood@yahoo.co.jp
お気軽にメールくださいね♪

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