葛(くず)という植物を知っていますか?

日本人にとって古くから馴染みのある植物で、秋の七草の一種であり、万葉集には21首もの葛に関する詩が詠まれているそうです。
葛の地下茎からは良質のデンプンが摂れ、和菓子の材料などに使われています。
「葛餅」や「葛切り」なんてご存じの方も多いのではないでしょうか。
また、一昔前はその繊維は貴重品で、葛布や和紙の原料としても利用されてきました。
ツルを乾燥させて編み籠など手芸品の材料にしたりしていた方もたくさんおられました。
そして、地下茎からはデンプン以外にも生薬成分が得られ、「葛根湯」という漢方薬などの原材料になります。
で、今回なぜわざわざこの植物をテーマとして挙げたかというと、葛の繁茂が間違いなくイノシシや鹿の増加の一因となっているからです。

(孟宗竹林の放置も同じくらい問題だと感じています)
上記の様に、日本人の生活に深く関わって有効活用されてきた葛ですが、山間部や里山に人が減り、誰も葛の根を掘り起こしたり、蔓を使って編み物なんて作らない現代社会では様相が一変します。
もともと繁殖力が旺盛な上に地下茎と蔓草で生息範囲をあっという間に拡大することができる葛は、海外では「世界の侵略的外来種ワースト100」という最強最悪レベルの不名誉な生物リストに入っています。

(擁壁の下に向かって伸びている様子。上に向かっても伸びます)
これは2~3メートルの高さの雑木林の様子ですが、木の上を完全に葛が覆って支配していますね。

これくらいは可愛いもので、山を見上げると山全体の半分ほどが葛に覆われている様な場所もあります。
この事の何が問題かというと、葛が樹木を押しつぶして天然のテントの様な有様になってしまうのです。
雨風は凌げるし、外敵は接近できない。逃走経路も豊富。獣の要塞の様になってしまいます。
空家なんかも1~2年でこんな感じ。

この写真は私の通勤途中の国道側の空き家です。
あと2~3年もこのままだと、完全に葛に覆われてしまうでしょう。
人の目に付く場所ですらこのような有様なので、人の目が届かない場所は推して知るべしですね。
猟期に入る山間部の耕作放置されたビニールハウスの鉄骨やブドウ棚、鶏舎なんかは酷いものです。
葛の柔らかい葉っぱは鹿のエサになります。
おまけにエサが乏しい時期でも根っこには豊富なデンプンが蓄えられています。
秋のドングリが終わり、新春のタケノコが出るまでの寒い時期は、あちらこちらで葛の根っこを食べるためにイノシシによって地面が掘り起こされています。

現在、全国各地で増えすぎた獣や鳥類を対象に有害鳥獣駆除が行われています。
一連の報道で、獣などが増えた原因として「ハンターの高齢化」や「ハンターの減少」などの理由ばかりが取り上げられていますが、ほぼほぼ見当違いなことです。
イノシシや鹿などの
獣が極端に増えた一番の理由は山へ人が入らなくなったことです。
一昔前は小さな山も近隣の集落での環境整備が行われていましたし、林業も盛んだったので頻繁に人が山へ入り下草狩りが行き届いていました。
寝屋や産屋となる藪も無く、必要以上に獣をおびき寄せる里山近くの植物相が無いようにきちんと整備されていたのです。
それに加えてハンターが山へ入っていたので、獣たちは「人は怖いものだ」ということを知っていたのだと思います。
イノシシや鹿などの農業被害や住宅地への出没を減らすには
・人が山へ入って下草を刈って寝屋や産屋となり、身を隠せる藪を無くす。
・エサの供給源となる耕作放棄された果樹園の樹木、竹林や葛原などを伐採する。
・里山近くの草刈りをしっかりと行い、人の生活圏と獣の生活圏を明確に区別する。
などの対策がまず必須だと考えます。
そういった事をしっかりと行った上で、ハンターによる有害鳥獣駆除を実施するのであれば確実に駆除効果が出ると思います。
下草刈りなどは誰でもできるので、過疎化に悩む田舎にもある程度の雇用が期待出来るでしょうしね。
ま、そうは言っても「獲っても獲っても獲物に困ることがない今の状況」に満足しているハンターが一定数いることも事実ですし、それが悪いことだとは思いません。
有害駆除と違い狩猟って個人の趣味ですし、何より獲物が獲れなくてはおもしろくないですもんね。
難しいですね。
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