「朝ごはんだよ~!!」
成長期のカヤとモリのために、茹でたイノシシの端肉とドッグフードにイノシシの骨を焚き出したスープをかけた朝ごはんを用意します。
(ふじは本当は一日一食だけど、欲しがるので少しだけ与えます)
ふじとモリが犬小屋から出て来て、ご飯を食べていますがカヤの姿が見えません。
「あれ?相当に冷え込んでいるから、寒さでハウスの中にいるのかな?」
と思って犬小屋の中を覗きますがいません。
不審に思ってワンコゾーンを隈なく探しますが発見できず、そこで初めてカヤがワイヤーメッシュを乗り越えて脱走したことが分かりました。
「うう、昨晩は爆弾低気圧の接近に伴う超強風が吹いていたからパニックになっちゃったか・・・」
寝巻のまま家の外を見回りますが気配なし。
すぐにスクーターに跨り、夜が明けたばかりの時間に近所を走りますが全く気配がありません。
「こりゃ仕事どころじゃないな…」
職場に電話をかけて(仮病で)休むことを伝えます。
過去最強と言われる寒気団に備えて、本格的にアンダーウエアと釣り用の防寒着を着込んでスクーターを走らせます。
住宅街や散歩コースには気配なし…。
ワンコの散歩をしている方に片っ端から声をかけますが手掛かりは得られず。
そして「どんなワンちゃんなんですか?」と皆さんに尋ねられるので、自分の準備が足りないことに気付いていったん帰宅。
まずは保健所と警察に電話して飼い犬がいなくなったことを伝え、該当する届けが出ていないか確認。
それから町内会や猟友会や知り合いに飼い犬が逃げたことを知らせ、保護した場合は教えていただけるように伝えます。
次に写真に連絡先を入れたものと、カヤの特徴を書いた「犬を探しています」のビラを作り、リュックサックに詰め込んで出直し。

「こうやって見ると女の子なのに強面だなぁ(笑)。でもこの写真が一番カヤの特徴が出ている気がする」
交番、駅、スーパー、銀行、コンビニ、動物病院、人間の病院、公民館などにビラを貼らせてもらい、犬を連れた方や郵便局の配達員に写真を渡して事情を説明します。
朝ごはんも食べていないことに気付き、再度帰宅してご飯を食べながらFacebookで情報拡散依頼の記事をアップします。
「考えろ…。カヤは少し臆病でビビリな犬だ。でも人懐っこいからどこかの家に保護されている可能性もある。でもどの方向に向かったのかが分からない…」
「考えろ…、昨日の夜までは間違いなく家にいたんだ。オレがカヤだったらどっちに行く?」
家から出て、隣の田んぼに行くと、通ったばかりの犬の足跡。
「見付けた!ここを通っている」
足跡を追跡し、アスファルトで途切れていましたが北方面へと向かっていることを確認します。
日頃はイノシシの痕跡を探すために使っている「見切り」の技術がこんな所で役に立つとは思いませんでした。
北方面には田畑が広がり、牛舎が点在します。
その方向にスクーターを走らせ、人家にはビラのポスティングを行い、農作業をされている方や牛舎で働いている方を見つけては写真を渡します。
そんな事をしていると結構な激しさのみぞれが降って来て、古くなった手袋から水気が滲み込んできます。
「考えろ。これだけ寒いとカヤならどうする?」
雨風を凌げる場所に避難すると考え、牛舎や農家さんの住宅があると、スクーターを止めて少し外から探してみます。
そして時々田んぼの中に犬の足跡がないかを確認します。
実はスクーターを走らせながら最悪なことも覚悟していました。
交通事故です。
幹線道路を回る時は道路や道の脇に犬の死体がないか確認しながら走り、田園地帯を走らせてカラスが集まっているような場所を見付けるとそこに犬の死体がないかを確かめました。
その間にビラを見た方から何件も着信。
「一週間くらい前によく似たワンちゃんを見かけましたよ」
「ありがとうございます。しかしウチの犬が逃げだしたのは昨日の夜なんです…」
どうやらよく似た犬が一週間ほど前から行方不明になっていて、しかもその別の犬が私が探索している方面にいるということが分かりました。
「う~ん、こいつは厄介だぞ。もし別のよく似た犬を見付けたらどうする? やっぱり一旦は保護しないと誤った情報ばかりが入って来ることになるな」
そうこうしているとスマホに着信。
近所のスーパーマーケットの社長さんからで
「配達途中に田んぼの中を走っているのを見ました。30分ほど前にカラスを追っかけていました」
方向的にも探している方向。
それに猟犬の血を引くカヤなので「カラスを追っかけていた」というのが説得力がありました。
現場に案内してくださるということで、すぐに現地に向かい状況を説明していただきます。
「ご丁寧にありがとうございます。ここからは私一人で大丈夫ですので」
「いえいえ、ウチにも可愛がっている犬がいるんです。お手伝いさせてください」
とのお申し出で、夕暮れまで一緒に探してくださいました。
日が暮れて気温も下がり体も限界。
帰宅してラーメン屋さんに行って熱いラーメンをすすりながら夕食を済ませ、車に乗り換えて再度ポスティングに向かいます。
プリントアウトしたビラが無くなり、再度目撃情報があった場所をうろついてその日は終了。
途中で氏神様を祭っている神社に立ち寄ります。
お賽銭は奮発して500円。
「神様、カヤは体は大きいけれどまだ5ヵ月の子犬なんです。こんなに冷え込んでどこかでお腹を空かせて震えていると思う…。どうか守ってやってください。
願掛けにカヤが見つかるまで、ほぼ毎晩飲んでいる酒を断ちます!(←夜中に保護した連絡があった場合、すぐに車を運転するためでもある)」
カヤが帰って来てもいいように、ドッグフードと茹でたイノシシ肉を玄関先に置き、物置や玄関の電気は点けたままにして就寝。
眠れぬ一夜を過ごしました。
翌朝、カヤが帰って来ていないかと出てみますが気配なし。
この日はどうしても片付けないといけない仕事があって職場へ向かいます。
Facebookで拡散をお願いしていたおかげで「こんな所に連絡すると有力ですよ」という色々な情報を教えていただけました。
まず、道路を管理して死体を回収する業者さんに確認の電話。
犬の特徴を伝え、該当するものがないことを知って一安心。
それからタクシー業者や宅配便、郵便局なども有効だと教えていただきました。
「よし、ここらはたくさんビラを作って一人一人にビラを渡していただけないか相談に行こう」
昼まで仕事をして帰宅。
帰宅途中で電話着信。
「今、お宅のワンちゃんを見つけてお電話しました。怯えて物陰に隠れて出て来ないんです。こちらに来れますか」
「分かりました、すぐにそちらに向かいます。ありがとうございます」
昨日目撃情報があった場所。
いったん帰宅して好物のお肉とチーズを用意し、ふじを連れて現場に向かいます。
「え?これ」
通報くださった方の奥様が逃げないように現地に張り付き、旦那さんに案内していただいた場所がこれ。

恐る恐る資材の下を覗いてみます。
「カヤっ!!」ウオッ!ウオオ~ンッ!!「バカたれ!何でウオオッて吠えてるんだよ。さあ、一緒におウチに帰るよ」
ウオォ!?そこでようやく私と認識したようで、ばつが悪そうにパタパタと尻尾を振ります。

それにしてもなかなか快適そうな隠れ家だね♪

ゆっくりと体をさすってあげると、お腹を見せて甘えます。
「ケガはしてないな。よかった。よしよし、寒かったな。お腹も減っただろう。よく頑張った」
持ってきたお肉を口元に持っていきますが、落ち着けないのか食べようとしません。
ふじを車から降ろすと「ヒャンヒャン」と情けない声で鳴くカヤ。
「さあ、お母さんと一緒にウチに帰ろう。モリも待ってるよ」
カヤを抱きかかえ、目一杯ヒーターを効かせておいた車内に運びます。
暖かくて気持ちいいのか、更にパタパタと尻尾を振ります。
帰宅してすぐにイノシシの骨を煮込んだ温かいスープをかけたご飯を用意してやると、ようやく安心したのかガツガツと完食。
ファンヒーターの前に毛布を敷いてやると、ぐっすりと寝てしまいました。

おかえりなさい。
しみじみとホッとしました。
↓無事でよかったね~!! と思っていただいた方はクリックプリーズ♪
にほんブログ村
にほんブログ村狩猟の魅力まるわかりフォーラム