ウォッ!ウォッ!声にならないふじの小さな吠え声。

(これは別の場所)
イノシシの寝屋(寝ている場所)を競った時のこと、竹が倒れてジャングルジムの様になった竹林に向かい小さく吠えるふじを見て警戒心を強めます。
以前、他の勢子役から教えていただいた話を思い出し、ふじがおっかなびっくりで吠える方向に銃口を向け、息を殺してイノシシを探します。
じわりと少しずつ立ち位置を変えてみますが、茂った竹林に遮られてイノシシは発見できず・・・。
「どうする?」
この日も気温が下がらず、汗をポタポタと流しながら暫し静寂の時間。
その時に新親方(若き勢子)の声。
「そっちの様子はどう?」
「助かった!寝屋にイノシシがいるけどふじだけじゃ押しが足りなくて出せないんだ。上から被せてくれない?」
すぐに新親方(若き勢子)が自分の猟犬を引き連れて応援に来てくれ、上下で挟み撃ちにするとすぐにバリバリと竹を踏み割る音を立てながらイノシシは逃走!
そのままそのイノシシには逃げられましたが、前親方が別の54kgのオスイノシシをゲット。

山の中にはあちらこちらに真新しいイノシシの痕跡がありますね。

早くも出た早生のタケノコを食べた跡。

ヌタ浴びをした体を擦りつけた生々しい泥。
山からはたくさんのイノシシが出たようだけれど、上手く待ち(射撃手が待ち受ける包囲網)にかからず「そろそろ待ちを解こうか?」と相談し始めた頃、副長の猟犬「サクラ」がイノシシの牙で切られたとの報告を受けます。
サクラはふじと同腹の姉妹犬。
傷はかなりの重傷とのこと。
何名かが山を降り、一緒に動物病院へ急行。
サクラが切られたので猟どころではなく、メンバーの皆さんに待ちを解くことを伝え、私も脱砲(銃から弾を抜くこと)して山を降ります。
ふじの姉妹犬のサクラが切られ、少なからずとも動揺していた状態で山を降りていました。
暑さと山の散策でふじもバテていたし、呼び戻しも効く猟犬なので引き綱無しのノーリードの状態。
車に戻るためにテクテクと歩いていた林道からスッと山に入って行くふじ。
すぐにふじの吠え声。
「あ、しまった。山を競り終わってイノシシもいないだろうとタカをくくっていたのに、イノシシと出くわしたな・・・」
すぐにふじを追って私も山に入ります。
「それにしてもさっきはまともに声も出なかったのに、今回はやけに張り切って吠えてるじゃないか。子供のイノシシにでも出くわしたかな?」
ギョッ!そこで見たものは、80kgをゆうに超えるような巨大なイノシシ。
ふじはイノシシから4~5メートルの位置で吠えてイノシシを立てて(鳴き止めること)います。
ギャンギャンギャンッ!!私の姿を見て勢い付き、ふじの更に大きな吠え声が山間に木魂します。
「こいつがサクラを切ったイノシシに間違いない!
すでに脱砲しているし、迂闊に山に入ってしまってイノシシから丸見えの状態だ・・・。
もう忍び寄ることは出来ないし、ふじの立て吠えで気を取られている隙に出来るだけ速やかに直線距離を近付いて撃つしかない」
急いで銃に弾を装填し、ふじが鳴き止めている場所に寄ります。
距離40メートル。
撃てる場所まであと一歩という所で、イノシシが私に気付きUターン!
追い鳴きを上げながらイノシシを追うふじ。
「ふじ、戻れっ!そいつはまだお前の手に追えるイノシシじゃない」一気に寒気がして鳥肌が立ちます。
急いでふじを呼び戻しますが、そのまま遠ざかる追い鳴き。
「ちくしょう!犬を切ることを知っているイノシシにあたってしまった。初心者猟犬のふじが立ち向かえる相手じゃない」
山を降りかけたメンバーの皆に連絡して、戻れる人には再度急いで包囲網を張ってもらいふじを追いかけます。
犬を切ることを知っているイノシシは、ハンターを充分に引き離し安全を確保してから猟犬を潰しにかかるのです。
イノシシとの駆け引きを充分に知っているベテラン猟犬でもやられることがあるのに・・・。
上がらなくなった足を必死に踏み出しながらふじを追いますが、しばらく姿が見えず。
山の中腹くらいまで登った時にようやくふじが帰って来ました。
どこにもケガはなく無事。
ほっ。
傷を負ったサクラは重傷でしたが、(予断は許しませんが)今のところなんとか命に別状はないようです。
帰路の車中で色々な事が頭の中を駆け巡ります。
「ふじはあんなに大きなイノシシに勇敢に立ち向かって行ってくれたのに、正直オレがビビってしまった。
自分の心の弱さからふじに呼び戻しをかけてしまった。
狩猟をやり始めて、初めて心底イノシシが恐ろしいと思った。くそっ!不甲斐ない・・・」
自分の出来る精一杯のことをしたつもりですが、本当にそれがベストの行動だったのかは分かりません。
少し自信が無くなってきました。
狩猟の魅力まるわかりフォーラムHP↑会場でパネル展示していただいています。
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