猟期中の休みは、とりあえず出猟(笑)。
乾燥した日が何日も続くと獲物の足跡が見つけにくく、どこの山に寝ているのかの判断が難しくなるのですが、前日の夕方までに降り止み、足跡も分かりやすいので絶好の大物猟日和です。
しかしこの日は猟隊のメンバーの皆が焦っていました。
見切りが上手いメンバーが多く空山(イノシシや鹿がお留守の山)を競る事がほとんど無いグループが、絶好のコンディションであるにも関わらず2ラウンド続けて空振りだったからです。
猟期の終盤に少なくなった獲物を「一か八か」で競るのではなく、餌を食べた跡も足跡も「間違いなくこの山にいる!」という場所を競ったのに獲物は出ませんでした。
午前中で「たくさん獲れたから」と猟を止め解体作業に入ることも多いのですが、お昼ご飯を食べて仕切り直し。
「三度目の正直」か「二度あることは三度ある」か?
静かに狙撃手が包囲網を張りめぐらせます。
3ラウンド目の私の待ちはこんな感じ。

右奥から延びてくる獣道と、これとは別に(画面には映ってないけど)左正面からの獣道を受持ちます。

2人の勢子が犬を入れるとすぐに2発の銃声。
「外れた! 今度こそイノシシが出たよ!! 50~60kgくらいのヤツが待ちの方向に向かってるから気を付けて」
勢子長の声。
緊張して待っていると、一旦は犬の追い鳴きの声が近付きますが、やがて犬の声も聞えなくなります。
「犬が匂いを落とした(見失った)か…」
と思っていたら「パキッ」っと枝を踏み折る音。
「いる…。オレの待ち場の前まで来ている。犬を撒いたからこの近辺が安全かどうかを確かめているんだ。
気配を殺せ…。注意を怠るな…。」
自分自身に言い聞かせます。
「パキッ!」
次の木の枝を折る音が聞えた時には、右前方からイノシシが飛び出していました。
しっかりと狙え3発撃つことの出来る7メートルの位置まで引き付け、初弾を発射!

反転し、逃げようとするイノシシに次弾発射!!

走り出したイノシシがバランスを崩してつんのめり、瞬時後ろ足を下に前足だけで獣道にしがみ付く様な格好。
更に後ろ足を軸に斜面を転がり落ちていくイノシシ。
落ち方が変。
「中ったな…」
すぐに銃に弾を補充し斜面を下りて追跡。
この下は深いブッシュになっていて、イノシシがガサゴソと暴れる音が聞えます。
「手負いになっている…。急いで止めないと犬が追い付いて来たら切られる」
と言うのも、私が撃ちかけたイノシシは70kg~80kgの大きな個体。しかも撃つ瞬間に、口元から突き出た牙がはっきりと見えたからです。
動けなくなったイノシシがブッシュの中ですくんで反撃してくる可能性もあるので、注意しながらおっかなびっくりのヘッピリ腰で進みますが、血の落ちた痕跡も見つかりません。
「無理をするな。一旦元の場所まで戻って待機しろ」
と親方からの連絡。
一段落して
若き勢子が猟犬を連れてきて追跡にかかります。
「大きかったから気をつけて…。頼む。」
私ももう一度イノシシの足跡をゆっくりと辿ると、血痕発見。

「やっぱり中ってる…。しかも結構な出血量。」
そのことを伝えると
「犬が伸びたね。獲物に付いたみたい。」
と若き勢子。
それから時々入る連絡。
「血を引いてるけどかなり走ってるね。」
「追ってるけど、どんどん高い所に登ってる。」
抜群の運動量を誇る若き勢子の、今まで聴いたことが無いような擦れる声と荒い呼吸音。
かなりの時間が経過…。
「止めたよーっ!」獲物を引き出すために若き勢子の場所まで向かいますが、仕留めた場所は見上げるような大きな山の山頂付近。

「オレが撃った場所からここまでどれくらい離れてるんだ…? はっきり言って無茶苦茶な距離と高低差だぞ。それを駆け抜けて来るなんて…。」
80kgのオスイノシシ。

最後は若き勢子に向かって反撃して来たところを仕留められました。
私の撃った弾は左前足を完全に飛ばしていました。

傷跡を見て、撃った直後のイノシシの行動が納得。
しかしこの状態で相当の距離を走り、一番高い山の山頂付近まで逃げ登るなんて…。
そして手負いとはいえ、それに追い付き仕留める若き勢子の凄さ。
う~ん、なんだか段々とキミは「人間以外の何か」に近付きつつあるんじゃないかい(笑)?
キミと一緒のグループで猟ができて良かったよ。
ありがとね♪
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