本日も大物猟。
今日の待ちはV字型の谷を挟んで、左側の斜面に待ちを下から順番に獣道に配置します。
右側の斜面の向こう側の山から勢子がイノシシを追い出して来るのを待ち受ける作戦です。
私の30メートル上には親父が守備につきます。
下には大した獣道がないので、下隣の射手とは100メートルほど離れています。
射手が山中を進み、まだ配置についていない段階で下から発砲音。
「銃に弾も込めてない時に鹿が出てきた。急いで1発撃ったけど外れた!」
とのこと。
射手が配置につく時は、できるだけ静かに進むのですが、やはり動物達には気付かれていますね。
それから勢子が猟犬を放し獲物の捜索開始!
20分ほどしたら山の上から犬の吠える声。
同じ場所から声が聞こえてくるので、犬がイノシシを鳴き止めているようです。
しばらくの間、膠着状態で泣き声の場所が変わりません。
勢子はまだ追いついてないようです。
こういうときは非常に判断に迷う時です。
射撃手の包囲網を突破された場合は、迷わず追いかけて行くのですが、こちらに向かって追い出そうとしている時に、肝心の射撃手がいないと話にならないし…。
しかし、イノシシが老獪な大物で、きちんと射撃手と勢子の位置関係を把握していたら犬を狙ってくるので、早く行かないと犬がケガしてしまうし・・・。
全員が判断に迷っている時、犬の声が動き始めました。
射手が全員
「来るか!?」
と待ち構えていると、ドンドンと下に下って行き、一番下の待ちの人の所に犬だけが出てきました。
「犬だけしかいないよ~、匂いを落としてる」
どうやら途中で犬が撒かれて、犬だけが下まで来たようです。
包囲網を突破した感じではないので、もう一度犬を呼び寄せ捜索のやり直し。
なかなか敵もさるものです。
再度の探索をしている時に、向かいの斜面から「パキッ」という枝を踏む音。
親父は耳が遠いので
「親父、気をつけろ!向かいに潜んでい・・・」
と連絡も終わらないうちに、ドゴーンッ!と銃声1発。
50メートルほど先の斜面を、イノシシがゴロゴロと転がり落ちてきます。
10メートルほど転がり落ちて、谷底で四肢を上に向けてピクリともしません。親父が
「倒したよ~」
との連絡を伝えます。
私の位置からはまったくイノシシの位置は見えなかったのですが、親父の場所からは見えていたようです。
親父が血抜きのためにナイフを出して近づきます。
間近に近づいた時、即死と思っていたイノシシがムクッと立ち上がり逃走!!
そのまま真っ直ぐ私の持ち場の獣道を進んできます。
「なんておいしいシチュエーション!」
とか思いながら狙いをつけて引き金を引く・・・、
あれ!?弾が出ない???
安全装置は解除しているし…、不発弾じゃん!
「不発!」と大声で親父に伝える間にイノシシは私の横を通り過ぎ、後ろの斜面を登っています。
それを聞き、親父の追い撃ち!
「えーっと、射撃教習では不発弾の場合は10秒間放置してから弾を抜くようにと言われたけどそんな場合じゃないな」
遊底を開き次弾を装填。
イノシシを見ると完全に後ろ向きで、崖を登っています。
「致命傷になりにくいし、モモ肉や背ロースが痛むし、撃ちたくないな~。
内臓や膀胱破ったら歩留まり悪いしな~。」
などと思いつつ、倒さないことには肉は手に入りません。
なんとか2発発射。1発は当たったようです。
結局、2人併せて6発撃ったところでようやく止まりました。
すぐに血抜き。

52kgのオス。
4発被弾していました。
親父の最初の1発は胃袋を貫通していました。
致命傷ではないけど、それで仮死状態になっていたのでしょうね。
膀胱は破っていなかったけど、両モモ肉がほとんどオシャカ(涙)。

(あーあ、こんなに穴だらけにして…)
皆さんからは
「えらい派手に撃っていたから3頭くらい倒したかと思ったよ」
なーんて言われてしまいました(笑)。