冷え込んだある日のこと、カチンコチンに凍って霜で凍てついた地面に、イノシシが掘り起こした真新しいエサを食べた痕跡。

「これは間違いなくこの近くに寝てるぞ!」
ということになり、射手が山を囲みます。
犬を入れるのは親方(若き勢子)と私。
エサの食べ具合から見て、複数頭のイノシシがすぐ近い場所に潜んでいる感じ。
この日、私が連れて行ったのはモリとカヤ。
例のケンカの後、ケガが完治するのを待って敢えて2頭で山入り。

親方(若き勢子)と私で猟犬を放ち、それぞれが違う山筋を待ち役(射手)が弓(包囲網)を張る方向へ向かって競ります。
すぐにでも獲物を発見して犬が啼き出すかと思っていたのですが啼かず…。
「おかしい。これだけ山中にもエサを食べた痕跡があるし、生足も付いている。いない訳ないんだけど…」
「空山(からやま。獲物がお留守の山)だったか…」
勢子役にも待ち役にもそんな雰囲気が流れ始めた頃、突如静寂が破られ
ギャンギャンと猟犬達が啼き始めます。
急いで寝屋がある孟宗竹の斜面を抜けると、そこは採石場と境界のセイタカアワダチソウやカヤが枯れた開けた場所。
「メチャクチャ冷え込んだからこんな陽当たりの良い場所に寝ていたんだ…」
スラッグ弾を薬室に送り込みながらギャンギャンとワンコ達の啼き叫ぶ方向へと急ぎます。
ギャンギャンという吠え声が少し小さくなると同時に
「ブゴォ~ッ!!ブゴォ~ッ!!」というイノシシの声。
ゼイゼイと肩で息をしつつも安全装置を解除して声のする方へと忍び寄ります。
そこで見たものは50kg~60kgほどの真っ黒なイノシシ。
そしてそのイノシシの鼻先と後ろ足に噛み付くモリとカヤ。
我が家のワンコ達はあまり噛み付きに行く猟芸ではないのですが、2頭一緒で気が大きくなり隙を見て噛み付いたのでしょう。
15メートル程の場所から銃を構えチャンスを待ちます。
「犬とイノシシが近過ぎる。それに目まぐるしく位置が変わるから撃てない…」
犬が獲物と絡んでいる時に撃つのは相当に危険が伴います。
脊髄や頭蓋骨など致命傷となる場所でも、大きな骨に命中すると弾が割れて内部から割れた弾が飛び出てきます。
(解体するとそのような傷跡は普通にあります)
肺や心臓など大きな骨を避けて撃っても、貫通した弾が岩やコンクリートなどに跳弾する危険性も大いにあります。
「くそっ!ちょっとでも離れて立てて(啼き止めて)くれたら…」
照準越しにイノシシとモリカヤの格闘の様子を息を潜めて撃てる瞬間を窺います。
イノシシを中心にグルグルと円を描きながら格闘は続きますが、鼻先に噛み付いていたカヤが首を振った瞬間に振りほどかれ、イノシシはそのまま山中へ猛スピードで逃走!!
「待ちの中に戻ったよ! みんな気を付けてっ!!」
親方(若き勢子)のワンコ達も他の獲物を出していたようで、それからは乱打戦。
親方(若き勢子)のワンコ達は35kgほどのイノシシを立ててくれゲット♪

モリとカヤがガブリ付いていた50~60kgほどのイノシシには結局逃げられました。
しかしまあ、1頭だけでも獲れたから上出来です。
ワイワイと皆で解体を終え、山の神様祭りの焼肉。

皆さん正直なもので、美味しいお肉の時はあっと言う間に無くなります(笑)。
モリとカヤがガブリ付いていた話をすると
「それで正解だよ。撃つことだけに執着して犬を撃ったとかいう話はよくある話だ。それが犬じゃなくて猟仲間だったりすると人生終わりだ…」
「近くでもあったんだよ。半矢の獲物に止めを撃ったら、跳弾が猟犬の上顎に命中したって話が…」
いつも楽しい話で終わるのですが、この日は「安全には充分気を付けよう」という話になってお開きとなりました。
しかしまあ、そういった当たり前のことを当たり前に出来る仲間が居てくれて本当に有難いことだと再度思いました。
今日も自然の恵みに感謝です。
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