巻狩りの前には、「誰がどこの待ち場に付く」とか「犬はここから放してこういう感じで山を回る」といった具合に簡単な作戦会議を行います。
もちろんイノシシや鹿などの獲物の動きや猟犬の動きによってその通りにならないことも多いのですが、各自のおおまかな動きを決めておかないと、作戦通りに行ってもそうじゃなくても判断に迷うことが大いにあるからです。
しかしまあ有難いことに百戦錬磨の先輩方と一緒にやって来れたおかげで、ある程度は想定外の出来事にも対応できるようになった気もしますし、連絡が付かないような状況でも「あの人だったらこう動いてくれるはず!」と信頼して待つことも選択肢として覚えたと思います。
今回の勢子役は私一人。
「モリとカヤは今が一番伸び盛りだ。ゆっくりでいいから犬を連れて回って、イノシシの探索と駆け引きをしっかり覚えさせてやれ」
先輩の勢子役の方にそう声を掛けられ、私が初めて競る山の地形や寝屋の場所を教えてもらいます。
「一尾根超えると谷向こうが本命のアオキとシダの茂った寝屋だ。更に下ると孟宗竹の深い藪があってそこにもイノシシは寝ている。」
待ち役の皆さんが配置に付き犬を放ちます。
そして先輩の勢子役の方に教えてもらった通りに尾根を越えると想定外の事が。
ガガガガガッ!!突然山中に響き渡る重機の爆音!
「しまった!こんな山の中で工事をしていたんだ。犬を放した時は休憩中だったのか音はしなかったのに…」
本命の場所に向かって下りますが、ますます大きくなる工事音。
「ダメだ。これだけ大きな音を立てていたらうるさくてイノシシは寝てないな。下の孟宗林を目指そう」
ギャンギャンギャンッッッ!!!そんな事を考えていたらワンコ達のけたたましい啼き声!
「獲物が出たよ!!」
内心ビックリしながら連絡を飛ばしますが、重機の音がうるさすぎて返信が何も聞こえません。
遠ざかる猟犬たちの啼き声…。
声の方向へと急ぎ、どこかでイノシシを啼き止めていないかと耳を澄ましますが、微かに聞こえる犬の声も重機の音にかき消されます。
バキッ!!いきなり後ろから枯竹を踏み割る音が聞こえ、20メートルほど先の暗い藪の中を70kg程のイノシシが走るのが見えます。
急いで猟銃の薬室に弾を装填し狙いを定めますが、イノシシのすぐ側に20kgほどの走る物体。
「どの犬か分からないけどイノシシに近寄っているな」
撃てずに見送ると、犬と思った物体が少し離れて明るい場所になると20kgくらいのイノシシであることが判明。
そしてその後に10kgくらいの小イノシシが4頭ほど付いて走り去ります。
「なんだ、全部イノシシじゃん。だああ、失敗した! じゃあ、うちのワンコ達はどこへ行ったんだ?」
数発の銃声が聞こえたような気がしましたが、相変わらずの爆音で状況がよく分からず、しばらくするとワンコ達も諦めて足元に帰ってきました。

猟の終わりがけの光景。モリ(上)とふじ(下)。
足が速くていつも一番脚が伸びるカヤもさすがにへばっている…、

と思ったら左足から垂れる血。

「くそ、やられた…」
私が少しでも「こんなうるさい場所には寝てない」と思った事が完全に失敗でした。
思い込みとハンターとしての未熟さゆえに、カヤにケガを負わせてしまいました。
猛省…。
猟の最中は重機の爆音で様子が分からなかったのですが、終わって皆さんの話を総合すると、

(倒したイノシシにガブリ付くワンコさんズ)
・100kg級の大物が3頭並んで逃げて行った(そのイノシシに射手が撃ちかけたけど、想定外の場所を走りあたらなかった)。
・私が見た子連れの大きなメスはどこからか包囲網を突破していった。
・別の中サイズのイノシシをきっちり射手の一人が止めてくれた。
という感じでしょうか。
カヤを突いたのは、傷の深さから長い牙を持った100kg級の大イノシシ軍団ですね。
すぐに病院へ。

(病院の診察台にビビるカヤ)
全身麻酔が施され、毛刈りと損傷度合いの確認。
イノシシの鋭い牙はナイフで刺すように入り、しかも泥を巻き込むのでしっかりと洗浄消毒をしないと化膿するとのこと。
傷口が小さく「大したことないな」と思っていたのですが、足と胸の傷はかなり深く土を巻き込んで抉られていました。
又ぐらの傷は産道や尿道や腸があるので心配しましたが、こちらは浅くて安心しました。
帰宅してもしばらく足が付けず、横になって寝返りをうつ度に「ヒャン!」と痛がっていましたが、翌日の昼過ぎになると機嫌も良くなり一安心。

体液が排出されるようにザックリと大きめの縫い目だったのですが、全部で25針以上は縫われています。
2日経過した今日は、ガツガツとエサも食べているし普通に歩き回っています。
とりあえず良かった。
ワンコ達を守るためにも、もっともっと精進しま~す。
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ハンター接近に気がつかなかったのでしょうね。
って何頭いたんですか!(≧∀≦)
反省です。
このラウンドで目視できただけでも10頭はイノシシがいました。
本当に失敗しました~!!
フランケンシュタイン縫いは基本ですものね。
我が家では私が縫っています・・・
ヤマでだいぶ訓練させられました。
麻酔は・・・「がまん!」の一言。
カヤさん、ちょっとの辛抱ですね。
頑張ってね。
だとすると、人間社会に対してどれだけ順応しているのだろう?と驚愕です。
あっきょさんが縫っているのですか?
それは凄いです!!
山での応急処置に覚えたい技術なので、是非教えてください。
私たちが猟をしていても、道路や住宅地を横断して逃げたりする個体がいたりします。
時々は人家の中に寝ているイノシシがいたりもするんですよ。
そうなるとどうやっても手が出せなくなります。
イヤー怖い。股座をヤラレル事を思うと...
鎖帷子のパンツが欲しくなります。
しかも泥付き。
切開して泥を洗浄消毒する必要性があります。
人間がイノシシにやられる時は、太腿の付け根の大動脈を切られることが多いですね。
怖い怖い!